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福祉情報(イングランド) by Kumiko Yabe


2014.05.03 エイジUKが孤独を真剣にうけとめてとキャンペーン

エイジUK www.ageuk.org.uk は65歳以上高齢者の孤独について新たな調査を発表して、その対策への寄付を呼びかけている。100万人以上が 常にまたはしばしば孤独を感じているという。5人に2人は主にテレビやペットと時間を過ごす毎日だ。3割の人 ができればもっと外出したいと望んでいる。12%は社会から隔絶されていると感じている。孤独は高齢者をみじ めにするだけでなく、健康にも大きな影響があると、エイジUKは今こそ孤独と真剣に対 応しなければと訴える。

「財政難で、各地で、ランチクラブのような、人との出会いがもてるサービスが縮小、閉鎖されている。エイジ UKのようなボランタリー・セクターのサービスが今ほど大切なときはない」とダイレクターが述べている。


2014.05.02 また、潜入取材で明らかにされたケアホームでの虐待

BBCのジャーナリストが悪質なケアホームに潜入取材したドキュメンタリーPanorama, Closed Doors: Elderly careが放送された。www.bbc.co.uk イギリス南東部エセックス県のブレイントリーという町にある入居者93人のケアホームでは、多くの入居者が無 視され、言葉でのいじめを受け、自分の便にまみれたまま放置されるなど、さまざまな虐待が横行していた。ニ ュースでも番組の内容が報道され、ラジオでは認知症と半身麻痺のある入居者がケアワーカーに怒鳴られて、ピ シャーとぶたれる音が何度も流された。一緒にいた他のケアワーカーもからかっている。これら一部のケアワー カーは明らかにケアに不適切な人材で、しかも研修が不十分とみてとれた。その後7人が解雇され、この入居者 をぶったケアワーカーは、逮捕された。

同ケアホームは、映画ルームや娯楽室が広く、たいていが自己資金で入居しており、最高の場合で週に700ポン ドの利用料をとられている。5月2日現時点で日本円に計算すると、約13万円ほどだ。1ヶ月で約52万円になるが 、スタッフが不十分で入居者のコールにすぐに対応できず、ベルが絶えずなり続けるような状態。介護ニーズが 複雑でベルを鳴らす頻度の高い入居者のベルの電源が抜かれていることもあった。こうした虐待・ネグレクトを 内部告発した1人は、解雇されている。

自治体やケアクリティ委員会が関わっているのに、こうした人権侵害の内容を、虐待がおこるような管理のあり 方をただせていない。いったいいつになったら、こうしたショッキングなニュースに驚かなくてもよくなるのだろう。虐待を予防するためのシステムははりめぐらされていても、それが働いていない。


2014.04.19 緊張感よぶ自治体のケア費用削減の10の方法

コミュニティケアの調べた「2014年度に自治体が取り組む成人ソーシャルケア支出節約のための10の方法」www.communitycare.co.uk には目をみはらざるをえない。

厳しい財政状態が続く中、2014年度も、かなりの数の自治体が、個別予算手当ても含め、ケアパッケイジの費用を減らして、多額の支出削減をしようとしているという。ある自治体は、アセスメントの焦点をADLからパーソナルケアに置き換えることで、ケアパッケイジの費用を抑制して320万ポンド(現在、1ポンド180円くらい)を削減する。そして、施設入所費用助成の限度額を下げることで200万ポンドの削減をめざしている。他の自治体も、ケアパッケイジの見直し(社会的活動費用抑制が予想される)、平均的個別予算の引き下げ、個別予算割り当て仕組みの見直し、現場のケアマネジャーにパッケイジ割り当て額の判断を任せることで入所ケアサービス利用を抑制、自己負担額の増額、デイケア利用日数の削減、各種ケアサービス利用時間の削減。これらはみな従来のサービスの削減に関しているが、いくつか単なる支出カットの方法ではない計画もある。

ひとつはリハビリなどの充実化で入所ケアサービス利用を減らすという計画、それから短時間ホームヘルパー訪問(15分。。。国から不適切と指導を受けている)をテレケア(テクノロジーを使った24時間サービス)におきかえて、薬の服用などの促しなどをするという試みだ。また福祉機器に投資することで2人のヘルパー訪問を1人ですむようにする。ケアの見直しを電話で実施、ケースによって再審査の頻度を減らすなどもある。

そして、契約のあるケアサービス事業者と再交渉して、支出を減らす。サービスの量も深刻なことになっているが、その質はどうなるのか、たいへん緊張してしまうニュースだ。




2014.03.30

シェアド・ライブズ事業ネットワーク、シェアド・ライブズ・プラスがThe state of shared lives in England というリポートで、同事業が、障害のある、または虚弱な、およそ一万人近く(大半は知的障害者)の成人の毎日の暮らしを、いかに改善しているかということを発表している。www.sharedlivesplus.invisionzone.com

シェアド・ライブズ事業についてのイングランド全体の調査は初めて。事業利用者の9割が新しい友だちができた、50%が初めて旅行へ行けた、25%が一般人のクラブに初参加などの生活改善を楽しんでいるという。

シェアド・ライブズ・プラスは最近、高齢者対象モデルなども開発して、同事業を倍増させるための助成を政府と宝くじ財団から受けた。同事業は他のケア事業と比べて低価格で支出抑制につながるといわれている。まだ、一般によく知られていない面もあり、自治体によって、盛んなところとそうでないところに多きな差があるということだ。


2014.04.27

ヘルス・ファウンデーションのプログラム、クオリティ・ウオッチのリポートFocus on: Social Care for older people , Reductions in adult social services for older people in England がNHSや政府に対し厳しい批判をしている。ケア・クオリティによると2009年度から2012年度の3年間で、イングランドの高齢者用ソーシャルケア支出は15%ほど減少し、公的助成を受けてソーシャルケアのサービスを受けている人の数は、25万人近く減少している。最大の削減は住宅改善や福祉用具で、次がデイケアやホームヘルプ、一番少ないのは入居ケアだ。こうした削減が、高齢者のウェルビーイングや健康、介護者に与える影響などについてのデータは集められていない。同リポートは将来のケアを計画するに当たって、十分なデータがないことは目隠しして空を飛ぶようなものだと、指摘する。

自治体はケア支出を抑制するために、組織再編、サービス利用者から徴収する料金の値上げ、受給要件を厳しくする、事業者に値下げを求めるなどの方策をとっているという。2006年度は軽度、中程度、重度、最重度のニーズのうち、重度、最重度のみが受給要件を満たすとしていた自治体は全体の65%だったが、2012年度は85%がそうなっていた。

現在、救急病棟は、訪れる患者が増えて、対応が困難な状況だが、やはりその一因は満たされないニーズが高齢者の健康に影響しているためだと推測されている。

www.qualitywatch.org.uk


2014.03.14

消費者支援の組織 ウイッチWhichが、家族がケアニーズのある高齢者のためにケアをアレンジしやすいようにと、だれでも無料で情報助言を得られる専用ウェブサイトを設けた。www.which.co.uk/elderly-care

ケアの選択肢やどんなことを考慮すればいいか、どうやって支払っていけばいいかなどを調べることができる。

ウイッチはこの1月に、393名のケアをアレンジしたことのある経験者にアンケート調査を行っている。それによると、あとで不適切と判明したケアについていろいろ調べて長時間を費やしたという人たちが3割以上、関係のない情報を調べて時間を無駄にしたという人たちも3割以上いた。「だれかが進んで情報を提供してくれるということがなかった。自分でみつけるために動くしかなかった」と、あるウィッチの会員は語っているという。

なお、ウィッチは、今、30人の高齢の家族のためにケアをアレンジしようとしている人たちに毎日、日記をつけてもらっていて、それを次号で発表するという。


2014.01.30 ケアサービス削減の当然のなりゆきか、90歳以上の緊急入院増える

ヘルス・アンド・ソーシャルケア情報センター www.hscic.gov.uk の発表したところによると、90歳以上の人が救急車で病院に運ばれるケースが過去3年で増え続けているという。労働党の議員は緊縮財政によりおきたケア・サービス削減のせいだと政府を非難している。高齢者支援組織エイジUKも、いつものように十分なケアを提供すれば、長期的にみて病院費などの節約になるのにという指摘を繰り返している。

精神医療サービスについても憂慮すべき報告Monitoring the Mental Health Care Act 2012/13がケア監査委員会 www.cqc.org.uk(医療福祉、ケアホームから病院、歯科医まで、サービス提供者を登録監査し、規制し、ケアの質を守っていく重要な機関、略してCQC)からでている。同委員会は入院ケアやクライシスや時間外のサービスが標準以下の質であること、また委託者は緊急入院を必要とする患者への計画実施の義務を実施できていないことなど、改善すべきことがたくさんあると警告した。BBCなどの調べによると2011年以降、精神医療用の1700床が減っているそうだ。空きベッドがないまたは十分な職員がなく安全でないがために、患者たちは警察に収容されているケースもおきている。またより抑制の少ないかたちで患者にケアを提供しなければならないが、適切なサービスが不十分なため不適切に拘束性の強い施設に置かれるケースもでているという。人権問題にかかわる重大な実態が指摘されている。


2014.01.21 意思能力法の適切な実施に力を入れていくと言うCQC

ケア監査委員会www.cqc.org.ukは、意思能力法の自由拘束措置の実施についてモニタリングを行っている。その報告書Monitoring the use of the mental Capacity Act deprivation of Liberty Safeguards in 2012/13 が、自由拘束措置のパターンの分析、ケアホームや病院の監査をとおしたモニタリング、監督機関(自治体)のモニタリング、拘束の対象となった人の経験を理解することなどについて、カヴァーしている。

その序文で、同委員会の所長は「意思能力法は、2007年、自由拘束措置は2009年から実施されているが、保健医療福祉業界のどの分野においても、いまだよく理解され、一貫性をもって実施されていると言えない」と指摘し、同委員会は意思能力法の実施促進にいっそう力を入れていくと述べている。

拘束を減らすことにいたった例。

「Dさんは、ケア施設に住んでいるが、そこにはデイセンターも併設されており、送迎用バスがある。送迎バスが出かけるときになると、Dさんはバスに乗っていっしょに出かけようとするため、職員はとめるのに毎日大変苦労する。施設は、これを防ぐため、Dさんの最善の利益にかなうと信じて、緊急に自由拘束の許可を申請した。

最善の利益審査者は、この状況を調べ、Dさんが過去にバスの車掌だったことを探し当てた。認知症のため、Dさんは、自分が車掌だと思っていたのである。審査者は、彼の気持ちが乱れて、拘束をしなければならないほどのことにならないよう、Dさんは送迎バスに乗ってデイセンター利用者の送迎に同行するべきだと示唆した。Dさんを中心に考えることで、施設はその個人史を理解し、それをケア計画にとりいれることができた。彼はバスに乗ることが許され、どんな意味でも自由を拘束されていない。自由拘束措置は必要なかった。

これによって、施設の職員は、意思能力法に従い、可能な限り拘束を避け、本人にとっての最善の利益を全体的に判断する方法を学んだ。」


2013.12.20 歴史的に前例のない自治体負担のサービス量の落ち込み

ケント大学の対人ソーシャルサービス研究課PSSRUのソーシャルケアサービス提供における変化・調査報告には、一度目をとおしておきたい。 Changes in the Patterns of Social Care provision in England: 2005/6 to 2012/13 www.pssru.ac.uk

2005年度と2012年度のソーシャルケアの支出を比べると、異なるタイプの利用者全般的にサービスの量が落ちている。単純に利用者数で言うと、26%の落ち込みであるという。もし2005年度レベルのサービスを維持したとするなら、その数から36%の落ち込みということができるのだという。

そして、最大のおちこみは高齢者対象でおきている。26万人、31%も少ない高齢者がサービスを受けている。64歳以下の利用者だと、24%、3万7千人少なくなっていた。その理由として集中的なリーエブルメントーサービスやNPOの活用などを考慮する必要はあるかもしれないが、利用者数もケアへの支出も減っていることは確か。とくに地域でのケアが落ち込んでいる。ここまでの自治体によるケアサービスの提供と支出の落ち込みは、ほぼ間違いなく歴史的に前例のないことであるという。


2013.12.16 介護のための有給休暇キャンペーン

介護者協会、ケアラーズUKが介護者が5日の有給介護休暇の権利を訴えるキャンペーンを始めた。その主張はThe Cases for Care Leave: Family, work the ageing population www.caresuk.org に詳しい。

同協会の調べでは、10人に1人は有給介護休暇の導入を支持している。英国(UK)では300万人が仕事をしながら介護し、ある時期に介護のために仕事を減らすことがあった、また230万人が仕事をやめざるをえなかったという。同文書は介護者が仕事を継続できないがためにかかる公的費用が年間13億ポンド、経済的損失は53億ポンドというデータをだして、有給介護休暇の導入議論を促している。

介護者はすでに、柔軟なはたらき方を求める権利などを得ているとはいえ、それでは不十分で仕事をやめる人が大勢いるということだ。介護者の権利においてベルギーやオーストラリアなどに比べ、英国は遅れているようである。


2013.12.14 認知症ケア施設の抜き打ち監査始まる

2013年12月11日、G8サミットは、認知症についての、世界規模の問題性、社会経済的影響などについて声明書をだした。WHOによると、世界には現在3600万人の認知症患者がおり、今後20年ごとに、その数は2倍ずつ増えていくと予測されている。

声明書には認知症の治療、症状緩和療法などの研究助成を増やすことも含まれている。イギリスは2025年までに助成金を2倍の12億2千万ポンドに増やすとした。キャメロン首相はマラリアやがんやエイズなどに対して果敢に立ち向かってきたのだから、認知症にも同じように力をいれていきたいと述べたという。認知症対策が世界的にもいよいよ医療政策の差し迫った最重要課題のひとつにあがってきたということだろう。

イングランドのケア監査委員会 www.cqc.org.uk は、150件のケア施設と急性期病院の認知症ケアについて抜き打ち監査を行う予定だ。患者のウェルビーイングをたかめるためにどのようなケアが行われているか、そして不必要な再入院などをいかにしたら防げるか、関係機関の協力に必要なことは何かなどに焦点をあてる。すべての監査報告(現状分析と改善策)が公になる。

 

2013-10-25 冬季寒冷期に予防可能な死が多すぎる

寒さの到来を前に、昨年度の冬季特別基金が虚弱高齢者などの対策に役立ったという政府のリポート ‘Warm home fund helped vulnerable residents’ が発表されている。www.gov.uk しかし、イングランドには燃料貧困者(生活費にしめる暖房費などが10%をこえるというのが定義)が500万人といわれ、冬の寒冷期には、予防可能な死因が2万4千人以上と推計されている。燃料貧困についてキャンペーンを行っている団体の調査では、イングランドの状況はヨーロッパで最も悪い方に位置すると、改善をうったえている。電力6社の値上げも発表され、暖房費か、食費かのようなせっぱつまった選択を迫られるような状況に実際おかれる人も少なくないと予想されている。

保健省が行ってきた寒冷期の健康対策は、公衆衛生の全国的機関 Public Health England の  責任となり、特別基金は終了した。そして、やはり今月に、同機関はこの冬の Cold Weather Plan をだし、長期的な取り組み、寒くなる前の準備、インフルエンザ予防注射、暖房器具の定期点検、断熱材の使用、天気予報による警告などについてふれている。

国の冬季特別基金は廃止されたが、各地で公衆衛生のために使われる2013年から15年度の予算としては、54億5千万ポンドが用意された。「公衆衛生成果フレームワーク」にしたがって、その予算が、いろいろと優先化されて使われる。各地で同じことにはならないだろう。クリニカル・コミッショニング・グル-プ(家庭医たちによる地元住民のための医療委託制度)、自治体、ヘルス・アンド・ウェルビーイング評議会のとりくみ方が鍵になる。寒冷対策も各地で差が大きくなるかもしれない。


2013-10-24 人手不足と低賃金、ケア施設での虐待をまねきやすい

ウェブ雑誌、コミュニティケア www.communitycare.co.uk の調査(200人のソーシャルワーカーと施設長に調査)によると、人手不足が虐待の大きな要因としてあがっている。他に重要なことは、ケアに向かない人の雇用、そして内部告発をしにくい閉鎖的な環境だという。

不十分な研修もまた見逃せない要因だ。研修は行われていてもその質が問題だという指摘もある。ただ、ケア施設側からすると、自治体が支払う料金が低すぎる、または自治体が民間のケアワーカーの研修(とくに虐待関連)も行っていくべきだという考えだ。その一方、自治体は、ケア施設の料金はケアクオリティ委員会に登録監査を受けている施設に払っているのだから、研修費用も含まれているという言い分だ。いずれにしても、介護職員が、自由剥奪に関する法律など、明確な理解をしていないということが明らかのようであり、研修の改善がなければ、法違反となり、虐待も懸念される。調査回答者は、ケア・クオリティ委員会に、より頻繁な訪問監査、専門化された監査管の導入、監査権限強化を、希望している。

ケア業界が十分に評価されず、低賃金になっていることも繰り返しいわれることだ。しかし、それだけでなく、払えるはずの最低賃金も支払わないケア施設もあり、2011年からそういう違反をおかした施設は、いくつかの要件にひっかかると、産業開発技術省によって、名称を公表されることになっている。この10月からは、その仕組みがもっと厳しくなる。


2013.09.18 自治体による値下げ求め、児童施設のケアに影響

週刊誌コミュニティケア www.communitycare.co.uk が特別ニーズのある児童の入居型福祉施設調査を行った。それによると、68%の事業者は、最善のケアができるような支払いを受けていないという。なんとか適切なケアを提供できるは30%、35%は良いケアが提供できる。3%は適切なケアを提供できないと答えている。

適切または良いケア、と回答している場合でも、いろいろと制限がある、アクティビティができないとコメントしている。またあるソーシャルワーカーは「自治体が値下げを求め続けていて、それがケアに影響しないよう苦労している」ともらしているという。緊縮財政の影響が児童のケアにも及んでいる。


2013.09.15 家族介護者と個別予算制度

ヨーク大学の社会政策研究所が Carers and personalisation: What roles do carers play in personalised care?  www.york.ac.uk 家族介護者とパーソナライゼーション(個別予算制度)について調査研究した報告をしている。

調査結果のキーポイントから 

○介護職員、家族介護者、サービス利用者はみなそれぞれに、家族介護者が個別予算制度のニーズ審査とサービス計画に家族介護者がかかわることの大切さを認識している。

○自治体はサービス利用者のニーズ審査の一環で介護者にどんな介助をしているか、どんな気持ちでおこなっているのか、今後も続けることができるのかを聞くことが義務付けられており、実施されている。

○自治体は家族介護者に介護者としてのニーズ審査を受ける権利があることを伝える義務がある。しかし、自治体職員によると、家族介護者が介護者としての審査を受けることを希望することは稀であり、介護者が追加の支援を受けることにつながっていない。また介護者の中には、説明を受けていないという人もいた。

○利用者のサービス計画ができる前に家族介護者のニーズ審査が行われることは稀だった。家族介護者への支援は、短期休養が多く、サービス利用者の個別予算とサービス計画に含まれているのが普通だった。家族介護者として特別の助成を受けている人は非常に稀だった。また審査する自治体職員は、家族介護者が今後も介護を続けるという思い込みを持っていることが多かった。

○家族介護者をどのように個別予算の手続きかかわってもらうかについて、まだ明確な仕組みが整っていない。


2013.07.24 自立しやすい新住宅建設のとりくみ

保健省が、高齢社会対策として、高齢者や障害者の自立を助ける住宅建設についてのプレスリリース New housing to help older people and disabled people to live independentlyを出した。www.gov.uk/government/news

ケアと支援担当大臣のノーマン・ラム氏は「3500の新しい家を建てる事業への助成金を決定した」と述べている。昨年、同省は同事業に3億ポンド(1ポンド現時点約160円)を用意し、入札を行うことを伝えていた。同氏は「よくできた、適切な住宅では、ケア施設への入居をせずに可能なかぎりアクティブな暮らしを続けることができる」という。具体的には、階段がない、あまりない、戸棚などがとどきやすく、浴室は障害があっても使いやすく、転倒をさけるための手すりなどがある。

ロンドンでは2900万ポンドが35の事業者に与えられ、669件の住宅建設事業が始まる。


2013.06.29 初めての全国的ケアサービスの受給要件と提供義務付け・素案

これまでも、自治体はケアのニーズのある成人(18才以上)をアセスメントすることは義務付けられていた。しかし、どの程度のニーズに対してサービスを提供し、どれほどのニーズを満たすかは、各自治体が国の指針に従って、それぞれに、レベルを決めていた。当然、自治体によって実施の内容がことなり、宝くじのようだと非難をうけてきた。日本からみると不思議な感じがすれかもしれないが、今回、初めてケアと支援を受けるための全国最低要件が設定され、サービス提供の義務が自治体に課せられようとしている。そのための討議文書が6月下旬に出された。詳しくはこの文書を参照してください。Draft national minimum eligibility threshold for adult care support www.gov.uk/dh

今のところ、たいていの自治体が国の指針のケアニーズのレベルの4段階のうちの重度な3,4(サブスタンシャル、クリティカル)の該当者に対してのみサービスを提供している。そして、同素案もサブスタンシャル相当を最低要件に提案していることから、関係NPO団体は反発を示している。

この段階にいたるまでには、まず、長期財源委員会や法律委員会の勧告、それらに応じた政府の白書、「未来のための介護(ケア支援改革)2012年7月」Caring for our future: reforming care and support 、続けてケア法素案発表、そして2013年5月にThe Care Billを国会へ提出という流れがある。ケア受給要件の規則は、同ケア法案の13条項に定められる権限によって、法制定後に設けられる。法案が順調に通過すれば、2015年4月から導入されることになるという。

なお、このケア法案は多数ある従来のケアに関する法律を総合化する歴史的に重要な法案であり、4部門(1ケアと支援、2ケア基準、3ヘルス教育、4総合)からなり、1部にはケアと支援ニーズを満たす義務付けについてや、ケア費用の個人負担の限度額設定や、虐待対策制度、介護者のアセスメントの権利など、今後のケアのあり方を大きく変える内容が含まれている。


2013.06.28 成人ケアと児童ケアの予算で明暗分かれる

6月26日、オズボーン財務相は財政再建に向け、2015年度予算の歳出計画を発表した。各省庁の経常支出が前年度比で実質8-10%ほど削減されるという。例外は医療と国防。ソーシャルケアでは、成人ケア制度の改革(総じてケアホーム入居費用を家屋売却までは自治体が立て替える。入居費のケア費用部分に本人負担の限度を設ける)の実施用として3億3500万ポンドが、自治体に渡る。また、高齢者や障害者などの医療福祉統合ケアのために、NHS(国営医療サービス制度)から38億ポンドが、各地の予算として渡され、自治体と医療委託グループ(クリニカル・コミッショニング・グループ、この春から各地で発足した地域住民のために病院医療サービスなどの委託に責任をもつ家庭医を中心とした組織、公衆衛生などは責任外)が共同使用する。過去3年で成人のソーシャル・ケアサービス予算は続けて2割の削減となっていたので、今回のニュースは歓迎されているが、実施の詳細については、まだ予断を許さないと関係者は語っている。

一方、児童ケアについては、追加削減、10%の基本予算についての削減が予定されている。


2013.05.04 CQCが大規模ケアホームの経済状況を監査する権限

ラジオ、テレビはメインニュースとして、政府が、介護や医療事業者を登録しそのサービスの質を監査するケア・クオリティ委員会 www.cqc.org.uk に、大規模ケアホームの経済状況を詳しく監査する権限をもたせるようにすると報道した。全国にいくつものチェーンをもつケアホーム事業者(民間営利企業)が倒産し、多数の入居者や家族を混乱心配させた近年の出来事を繰り返さないようにとの対策である。実施は法制度を整備して、2015年からになる。多くは賛成というが、事業者のなかには規制による手続きが増えることを嫌うものもいるようだ。


2013.04.22 ケアの監査の専門性を確立する

ケア・クオリティ委員会 www.cqc.org.uk は新たな戦略(2013-16)を出して、漸次、監査の一般モデルを廃止し、監査官を専門化させることを明らかにした。これまで医療と福祉の全般を幅広く監査する責任をもつCQCが、雇用する監査官を専門化せずに、それぞれに別な基準にそって働く業者たちを、おしなべて監査していたことで、事業者から信頼性を得られずにいたという。CQCの最高責任者がコミュニティケアwww.communitycare.co.uk の取材に「大学病院から自閉症小規模施設、そして歯科医まで、同じようなアプローチをしてきた、そういうあり方は過去のものにならいといけない」とコメントしている。

新戦略は、研修の専門学校を設けたり、監査側と事業者の間で出向させあって互いに理解しあうなどの方策に触れている。またCQCはケアサービスの番付制度を再開させるという。


2013.04.05 この4月から福祉、医療のあり方が大きく変わる

この4月は福祉、医療双方で、大きな制度の変更が実行される。医療では2011年からNHS(国営医療制度)委託委員会が設置されたのを始めに着々と準備が続けられ、保健省の一執行部であったNHS(国営医療制度)は、今や保健省から独立したNHSイングランド www.england.nhs.uk という公的組織になっている。同組織が、従来のNHSの各地のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)にかわって、家庭医(GP)などとのプライマリケアの委託契約を行う。そしてイングランド各地にできた211のクリニカル・コミッショニング・グループ(CCG)が、PCTにかわって、地域住民のために病院などの医療サービスを委託していくことになった。たとえば、私の住むロンドン、クロイドン区(ロンドンで人口が一番多い区)では61のGPが参加したCCGが人口約34万人をカバーする。サービス委託の対象がより広く民間医療事業者に及ぶ可能性を指摘して、NHSを裏口から民営化する動きと警戒する声もある。また、医師会は家庭医たちが予算を握ってその使いかたを判断し、合理化することになることから、患者との信頼関係に影響を及ぼすと懸念している。

またパブリックヘルスは、パブリックヘルス・イングランドという組織と各自治体に任されることとなったこ。ヘルスウオッチという監視団体も各地でスタートした。そして、各自治体にはヘルス・アンド・ウェルビーイング委員会が設けられた。同委員のメンバーになるのは、自治体の議員、社会サービス部長やCCGの代表、監視機関のヘルスウオッチなど、つまり医療福祉の関係者と選挙で選ばれた住民代表。医療福祉サービスの統合的なあり方と、より民主的な運営が狙われており、その成り立ちを生かして住民のニーズと優先課題を明らかにし、包括的な対策をたて、住民のウェルビーイングを高め健康格差をへらしていくことが求められている。自治体はNHSのサービスまたはNHSの委託するサービスについてより細かく調べることができる。

複雑な種類の社会保障給付(所得扶助、雇用支援手当て、求職支援手当て、住宅手当など)がユニバーサル・クレディットというものに統合された。これまでは週ごとの支給だったが、月ごとの支給になる(4月から試験的に、10月から全国一斉に)。そして給付に上限が設けられ、2人親家族と片親家庭は500ポンド、単身者は350ポンド。上限が適応されないのは、労働税補助、雇用支援手当て、戦争年金、障害ケア関連給付受給者。さらに、62歳以下を対象に、住宅扶助に関して、通称ベッドルーム税というものが導入された。賃貸物件に余分なベッドが1室ある場合。14%住宅費が削減される。2室余分にある場合は25%の削減だ。余分なベッドというのは次のような考え方で計算する。成人のカップルに1室、16歳以上単身者に1室、16歳以下同性の兄弟姉妹2人に1室、10才以下では異性でも2人に1室という割り当てで、空き室があるかどうかを計算する。一緒に住まない人でも夜間に介護の目的で宿泊する場合は1室を認めるなど例外規定はあるそうだ。なお支援付き住宅は適用外という。

また、通称DLA障害生活手当てが、この6月からロンドンをはじめにPIPパーソナル・インデペンデンス・ペイメントと言うものにおきかえられる。従来のDLA受給者は10月からじょじょに再審査を受け、みなが再審査を受け終えるまでには4年くらいかかるのではといううわさがある。またDLAにはケア費用部分そして、移動手当レベル1,2と分かれていたが、移動レベルは一元化された。

国の実施していたクライシス・ローンや地域ケア助成は廃止され、各地方自治体が独自に運営することになった。


2013.03.08 最新の成人虐待の統計

Health and social care information centreヘルスとケアの情報センター www.ic.nhs.uk が、2011年4月から2012年3月までの、最終的なイングランドの高齢者虐待Abuse of Vulnerable Adults in England 2011-2012 統計を発表した。情報は152の自治体の虐待対策チームが年間をとおして記録したものを、年度末に同情報センターに報告したものの集積である。報告は自治体の義務である。

121自治体から、総計136000件の虐待アラート(虐待対策チームへの最初のコンタクト)の報告があった。前年度に比べ、44%の増加だ。前年度は101自治体の報告のみだった。今年度はその101自治体のうち2自治体は報告をしていない。

152自治体から108000件のリファーラル(アラートが審査され、リスクのレベルが所定の限界を超えているとき対処のための調査が開始される)の報告があった。前年度に比べ、11%の増加である。

リファーラルの61%は女性、60%は65歳以上。49%は身体的障害のある人だった。虐待の一番は身体的なもので29%。場所は自宅が40%、入居型ケア施設が39%。虐待者はケアワーカーが28%、親族などが22%。こうした傾向は前年度に平行している。


2013.02.28 入居型ケア施設の8割ほどが認知症患者

アルツハイマー病協会 www.alzheimers.org.uk が、この2月に出したリポート「低い期待」Low expectationsによると、英国の入居型ケア施設の数は約2万件で、入居者の8割が認知症または重度の記憶障害のある人達と考えられるという。自宅や支援型住宅でのケアが促進されて、施設に入居する人たちは、かなりニーズの高い人たちになっている。言い換えれば、地域ケアが進んでも、とくに症状が進んできた場合、施設ケアがどうしても適切な選択肢となっている。しかし、ケア施設に入居していた認知症患者の家族の41%が「QOLはよくなかった」と答えている。

さらに、一般の人の入居型ケア施設へのイメージは悪く、今回の調査でも7割の人が入居するのは「怖い」としている。また施設での虐待対策が十分になされていないと考える人も6割以上いた。一般の人のケアに対する期待がこれほど低くては、ケアやQOLが向上しないとして、同協会は政府や業界が協力して、さらにいっそうの努力をして問題に取り組むよう訴えている。

同リポートは、また、ケア施設の質の監査の一貫性について、そして規則でしばってケアの質の向上をしていくのが適切なのか、疑問があるとものべている。

●930万人の成人が、認知症で入居している人を誰か知っていると考えられる。

●65歳以上の3人に1人が認知症になると推計されている。

●80万人が認知症で、その半分以上がアルツハイマー病と推計される。今後10年以内で認知症は100万人に増えると見込まれる。2050年には170万人に。

(同協会のプレスリリースより)


2013.02.13 在宅ケアワーカーに継続性や訪問の遅れやキャンセルなどの問題あり

ケアの質委員会  www.cqc.org.uk が在宅ケアサービスの監査報告書Review of home care servicesを発表した。監査対象になった250事業者(利用者数26419人)の74%は5つの全国基準(①利用者は尊重され、ケアや支援について意見を聞かれどういう状況か説明を受ける。②利用者はニーズを満たすケア、治療、支援を受ける。③利用者の安全。④利用者は適切な仕事ができる能力を持った職員にケアされる。⑤ケア事業者はサービスの質を定期的に監視する。)を満たしていた。

問題が見られたのは、ケアワーカーの継続性、研修と評価、訪問の遅れやキャンセルである。ある利用者には、35回の訪問のうち、13人の異なるケアワーカーが訪れていた。また、新しいケアワーカーは利用者のニーズを知らされていないことが多く、利用者は苛立ちを覚えるとコメントしているという。

利用者がケアワーカーの訪問の日時について、事前にまったく知らされていないケースもあった。約束の訪問時間への遅れ、また通知なしでキャンセルされることもあった。

ケアや病状に関するリスクアセスメントがなされなかったり、ケア計画が何年も更新されないままのケースもあった。事業者によっては、ケアの質やケア計画に関する情報を適切にモニターする仕組みが確立されていなかった。

当然ながら、同委員会の勧告は「訪問の遅延やキャンセルの解決に向けて委託者と共同して努力する・遅延などのケースを検討して原因を明らかにする・新しいケアワーカーを利用者に適切に紹介するようにする・新しいケアワーカーの導入研修を全国基準に沿って行う・職員には、各地の虐待対策手続きなどを含めて、最善のケアの研修を行う。・家族や介護者の意見をもっと積極的に集める」であった。


2013.01.29 わかりにくいケア制度、介護に不安

民間医療関連企業ブーパ www.bupa.co.uk は、2000人(65歳以上)に老後のケアについてどう考えているか調査した。その結果によると、47%の人が国営医療制度または自治体がケアを賄って、提供してくれる、26%がよくわからない、と回答しているという。回答者の多くがケアの費用を準備していない一方、25%がケアの費用を心配し、22%がだれにケアしてもらえるかと不安がっている。

ブーパは、ケア制度が非常に複雑なので、一般にケア費用を用意する必要がよく理解されていないので、仕組みをもっとわかりやすくすること、そして制度運営に十分な財源を確保しなければならないと訴えている。

ブーパによれば、現在、自治体がケアホームに払っている金額は低すぎるという。良い質のケアを提供して、運営維持していくためには、あと9億ポンド足りないと推計している。


2013.01.28 自治体によって成果が大きくことなるパーソナライゼーション

TLAP(地域で考え、個人的に動く)www.thinklocalactpersonal.org.uk は、公民両セクターにわたった全国的な多数のパートナーシップ団体で、ケアのパーソナライゼーション(ケアニーズのあると認められる人が、本人主体で、ニーズの自己審査も含めて行い、個別予算を受け、サービスを選択・組み立て、管理していくこと)そして地域ベースのケアを進めていくことが目的である。今日、Improving personal budgets for older people – A review 高齢者の個別予算を改善する-検討書)を発表した。

それによると、自治体によって高齢者のパーソナライゼーション実施には非常に大きな違いがある。また高齢者は若い世代に比べて、自分でサービスをアレンジする上でサポートを十分に受けていないということが指摘されている。裏返していえば、改善すための取り組み方法はいろいろあるということだ。

ケアの費用となる個別予算の受給資格がある人は、予算の直接現金給付を受けることができる。だが高齢者は不安に感じたり、面倒に思い自治体管理を選ぶ傾向がある。それでは選択が限られかねない。そこで、家族やNPOなどに委任したり、個別サービス基金(サービス提供者管理)を設けたりしている。職員の考え方や経験不足で、高齢者が個別予算を使ってサービスの選択・組み立てをするうえで、十分な支援ができないことについては、熟練の人をやとって職員指導にあたってもらっているところもあるそうだ。また身障者と高齢者のチームを統合したところもあるという。支援計画のクリエイティブな方法を、地域のNPOに外注する形でくふうしているところもある。

TLAPの個別予算事業の改善のためのプロジェクトの次のステップは、良い実践を集め、分かち合うことという。この春にはその内容が発表される予定だ。

  

2013 01.20 知的障害者のための読みやすい新聞発行

www.unitedresponse.org.uk

1973年に始まった、心身になんらかの障害をもつ人たちのための民間非営利組織、ユナイテッド・レスポンスは、現在、イングランドとウエールズの200箇所で、3000人を雇用している。サービス提供、キャンペーン活動などをしているが、このほど知的障害者のための読みやすい新聞Easy Newsを発行することになった。

創刊号は、2012年におきた主なニュースの要約からなっている。同新聞は2カ月おきで、オンライン、印刷物、CDもある。


2012-12-21 年齢差別でガン治療を受けにくい高齢者たち

マクミラン・カンサー・サポートwww.macmillan.org.uk という民間非営利組織が、イングランドのNHS(国営医療制度)のガン治療で高齢者差別が行われ、最善の治療を高齢者が受けられないでいるという調査結果を発表した。調査回答者(腫瘍専門医や専門看護師、家庭医など)の48%は、医療関係者の高齢者への偏見や思い込みのせいで、最善の治療を受けられないでいる高齢者がいると思うと回答している。また45%は、年齢を根拠に治療を拒否されたことのある患者を診療したことがある。そして67%は医療関係者が高齢者にそっけない態度や見下した態度をとっているのを目にしたことがあるという。

こうした調査結果は、これまでの他の調査にかさなるもので、マクミラン・カンサー・サポートはイングランドのヘルスケア提供者が、治療を年齢だけで決めるのでなく、身体、精神状態など包括的な方法論、アセスメントを確実に適用するよう求めた。

AgeUK(高齢者のための最大手、民間非営利組織)の代表は、「英国のガン患者の生存年数はヨーロッパと比べてかなり低く、早急に改善を望む」とコメントしている。国営医療の制度上は禁じられている年齢差別だが、根絶にはまだまだ時間がかかりそうだ。


2012-12-18 2015年にはILFを中止、その財源を自治体に移す

障害者担当大臣がインデペンデント・リビング・ファンドILFを2015年でとり止めて、その資源を自治体またはスコットランドやウエールズの議会に移し、イングランドの場合は、自治体の自由裁量の財源にする、イングランド以外はそれぞれの議会の決定に任せるという声明 www.dwp.gov.ukを発表した。同大臣は1988年に始まったILFは、もう維持するのが不可能だという。1990年半ばに導入されたダイレクト・ペイメント(直接現金給付)の制度によって、主流の仕組みをとおして、障害者は選択を行使し、自分でケアや支援を管理することができるようになったことから、ILFはもう不必要な仕組みになってしまっているし、主流の仕組みとの兼ね合いでこみいったことになり維持可能ではないというのだ。すでに2010年に新規のILF適用は中止になっており、ILFの運用について関係者らへの協議がなされてきた。この10月に協議を終え、今回の声明となった。

これまでILFの再評価は2年ごとに行われてきたが、2013年からは制度変更のための評価となり、2015年以降を見越してのニーズとサービス提供の検討が行われることになる。ILF2万人の利用者は、自治体によるILFケアパッケイジの再評価の過程でサービスが削減されることを不安に感じているという。1993年以降にILFを受ける資格を得た利用者はすでに、主流の仕組みのケアマネジメントのケアパッケイジの一部として自治体から助成を受け、包括的審査をうけているので、あまり問題は予想されないが、それ以前に資格を得た利用者のなかには自治体とのつながりがない人もおり、制度変更が公正に実施されるよう、行動指針などをつくって、年金労働省は見守っていくという。


2012-12-14 ソーシャルケア法制度体系化の合同委員会設置される

www.communitycare.co.uk によると、この7月に出た「ソーシャルケアとサポート」法案草稿の協議が10月に終了し、上院、下院の両議院からなる合同委員会が同法案の検討に入った。同法案は、高齢者虐待対策の仕組みを法制化すること、自治体の助成するケアとサポートの全国的最低基準を設けること、介護者支援への新しい権利の導入など、長年の懸案事項をいくつも含んでいる。と同時に、多数(12ほど)の現存するソーシャルケアに関する法律をまとめて体系化することとなる。2013年はソーシャルケアにとって大きな制度再編に当たる重要な1年になるだろう。


2012.11.08 認知症フレンズを2015年までに100万人養成する

キャメロン首相が自ら、一般の人々の認知症への態度を変えようと、イングランドにおける大規模な認知症フレンズ計画を発表した。BBCラジオのニュースによると、日本の認知症サポーターをモデルにしているようである。

同計画はアルツハイマー協会www.alzheimers.org.ukがリーダーになって実施するもので、希望者は無料の認知症に関する講習を受けることができる。それによって受講者は、認知症への理解を深め、認知症患者が理解され、地域に受け入れられたと感じられるように対応できるようになり、認知症フレンドになる。

受講希望者はアルツハイマー協会の認知症フレンズのサイトで登録できる。2015年までに100万人の認知症フレンズを養成することが同計画の目標だという。また同協会はすぐにもこの計画を英国全土に広げたいとしている。

認知症フレンズにはわすれなぐさのバッジがわたされる。わすれなぐさはアルツハイマー協会のシンボルである。


2012.10.11 絶えず急いでケアにあたらざるをえないホームヘルパー

公共セクターの職員の組合、ユニソンwww.unison.org.ukが、ホームヘルパーの賃金や勤務体制に関する倫理的ケア憲章を作った。ケアワーカーは、短い時間に複数のケアを割り当てられ、ともかくただ急いでケアにあたるか、時間より早めに切り上げてサービス利用者の家をでるような状況で、とても利用者が満足できるような状態ではないと指摘し、主なサービスの委託者である自治体に改善を迫っている。情けないことに、ホームヘルパーは介護相手のニーズを満たすだけの時間を与えられるべきというような当たり前のことが、憲章にあげられる。

ユニソンは今年6月、7月の間、ホームヘルパーのオンライン調査を行った。その結果がTime to care-A UNISON report into home careにまとめられているが、労働条件の悪さがいかにサービスの質を低下させるかが明らかになっているという。たとえば、冒頭でふれたように、「8割近い回答者がいつも急いでいる」というし、4割近い回答者が「頻繁に違う利用者を割り当てられるので、継続性がなく、関係を築きにくい」と嘆いている。


2012.10.10在宅ケアサービス事業、改善なくては危機的状態になると警告

10月初旬、オックスフォード・ブルックス大学の公共ケア研究市場分析センター IPC market analysis centreがイングランドの高齢者の在宅ケア市場を分析したリポートを発表した。

http://ipc.brookes.ac.uk/services/mac.html

同リポートは、イングランドの在宅ケア事業者たちが大変に困難な状況にあるという。これからの可能性を見込んで大きな会社も参入してきてはいるが、業者の多くは小規模または中規模で、いまだ低賃金・低ステイタスの業界。そのうち74%が民間営利、14%が民間非営利、11%が自治体、1%がNHSだ。在宅ケアがどのようにあれば効果的かなどの研究は不十分で証拠が限られよくわかっていない。また、他のサービス提供者たとえば福祉用具などの関係者との連携がなされていないことも問題と指摘されている。

小中規模業者は緊縮財政のもとサービスの削減の影響も受けやすい。それら不安定な経営状況にある事業者が、住宅や医療、福祉関係の委託者、またパーソナライゼーションの個別予算の現金給付を使った個人など、各方面から求められるさまざまなニーズ(買い物から緩和ケアまで)に対応して、なんとかサービスを提供しているが、採算を取るのが難しくなっているという。

同大学の公共ケア研究市場分析センターは、政府、事業者、委託者が共同して、在宅ケア市場を再構築していかなければ、容易でない事態がおこるだろうと警告する。それを避けるために、ライフスタイルの支援(低いレベルでのケアと支援でよく生活する)、短期集中介入の支援(入院・施設入居を防ぐケアと支援)、長期維持の支援(ケアを受けながら長期にわたって地域で生きていくための支援)の3つの支援をするそれぞれ異なる事業セクターが確立されることが必要で、その場合、委託のあり方や担い手の技術のレベル、そして規制の仕方も違うことになるだろうという。


2012.09.07 新しくソーシャルワーク資格を取った人の見習い制度

この9月から、新しくソーシャルワークのコースを修了した資格取得者(ソーシャルワーカー)の、就職先での1年間の見習い期間のあり方が変わる。この1年間は、基本的に技能、知識、能力を開発し、専門職者としての自信と実践力をつけることが目的だ。従来の仕組みではこういう成果があったという証拠を実践のポートフォリオと論文の形で提出するのに対し、新しい仕組みのAssessed and Supported Year in Employment (ASYE) では多様性や人権など9つの要素からなる枠組みについて現場実践モニターを含めた審査を受けることになる。

7月2日のコミュニティケアwww.communitycare.co.ukの記事によると、当初は見習い期間の審査結果とソーシャルワーカーの登録をリンクさせる計画だったようだが、今のところ直接のリンクは設けられていない。また雇用者のASYEの参加も自由裁量である。ASYEにとりくむ雇用者(自治体やNPO)は新資格取得者1人につき2000ポンドの助成金を受けることができる。申請先は、成人ソーシャルワーカーに関してはスキルズ・フォ・ケア、児童ソーシャルワーカーに関しては教育省だ。www.skillsforcare.org.uk

もう1つの問題は、ASYEの審査で不合格となった人への対処方法だ。雇用現場はより明確な指針を求めている。


2012.09.05 セイブ・ジ・チルドレンがUK国内の貧困救済キャンペーン

アフリカ児童の飢餓救済などで知られ国際的に活動するNPO、セイブ・ジ・チルドレンが www.savethechildren.org.uk 英国内の貧困救済のキャンペーンを開始した。英国で今、160万人の子どもたちが深刻な貧困生活をしているという。その救済活動のため50万ポンドを集めることを目標にしている。

スローガンは「ここでこんなことが起きてはいけない」。食費や燃料費の上昇、社会保障給付や所得の減少などのため、低賃金労働者の家庭の子どもたちの多くが、三度の食事を満足にとれない、靴や冬服を購入できなかったり、学校の遠足費用がだせないなどの苦境にあるという。キャンペーンはアフリカ飢餓へのものより地味だが、現政権への批判として象徴的だとみられる。

集めた資金は、「食べ、眠る、学ぶ、遊ぶ」プログラムで、生活の基本に必要なガスレンジやベッドなどの供与や学習支援に使われる予定だ。


2012.08.01 ソーシャルワーカーの登録・規制の責任がHCPCに移る

この8月1日より、イングランドのソーシャルワーカーの登録規制を従来のGSCC(ソーシャルケア協議会)に替わってHCPC(医療福祉専門職協議会)www.hpc-uk.orgが行うことになった。

HCPCの対象の専門職は、理学療法士、足治療士、作業療法士、救急医療士、放射線治療士など14の医療関連専門職とソーシャルワーカーである。これらの専門職はみなHCPCと登録しなければならない。そうしてはじめてそれぞれの名称を名乗ることができる。登録した専門職者がHCPCの基準を満たさないときは、登録をはずされる場合もある。

イングランドの8万8千63人のソーシャルワーカーは2012年11月30日まで、登録を更新しなければならない。その後は2年ごとの更新となる。


2012.07.11 ソーシャルケア白書発表される、財源問題また先延ばしに

待ちに待たれたソーシャルケアの白書が発表された。「私たちの未来のための介護-ケアと支援の改革」Caring for our Future: reforming care and support http://caringforourfuture.dh.gov.uk また、ケアと支援法案草稿 Draft Care and Support Bill やソーシャルケア財源改革についての進行状況報告も同時に発表されている。専用のウェブサイトでは保健省大臣やケア担当大臣のコメントをビデオで見ることができる。

同白書と法案草稿は法律委員会やディルノット委員会の勧告に基づき、ケアの財源を確保する仕組みを確立するとともに、長年の間に非常に複雑化した福祉の法律制度を整理し、わかりやすくシンプルにすることを主な目的にしている。

保健大臣は国会に白書を提出するに当たって、1948年の福祉国家成立以来の大きな改革になる、また、利用者中心サービスの強化、早期介入、家族など介護者の位置づけ(参画)の強化、サービスへのアクセスの一貫性の強化をとおして、ケア・サービスの利用者、介護者や家族に安心感を与えることになるなどと述べている。

主な提案は「ケアと支援情報の全国化、ケア従事者の行動指針や研修基準の改正、個別予算への権利導入・個別予算利用者への独立助言の改善、医療の質基準を規定する機関NICEの役割を拡大しソーシャルケアの質基準も策定するようにする、虐待防止にすべての機関が関わるよう法律を制定する、介護者の権利強化、医療福祉の統合改善、原則としてディルノット委員会の勧告に従う(ケアホーム入居費用自己負担に限度額を設ける―ただし任意加入制の仕組みを検討する方向・資力調査で許される財産保有限度額の引き上げ・生存中はケア費用負担のために自宅を売却しなくてもよくする)」。そしてソーシャルワーカーにとって3つの注目事項がある。1つが「ニーズアセスメントを多数の民間プロバイダーに委託する。このプロバイダーには独立ソーシャルワーカー事務所も入る」。独立ソーシャルワーカー事務所は試験的なプロジェクトが進行中で、まだその実効性がよく検討されていない。この流れでいくと、虐待対策のソーシャルワーカーをのぞき多くのソーシャルワーカーが自治体の雇用をはずれ民間の組織ではたらくことになる。2つ目が「コミュニティデベロップメントの役割を担う」という方向性、3つ目が「各自治体によるソーシャルワーク長(プリンシパル)の任命」である。ソーシャルワークが大きな転換点にあることはまちがいない。

ケアの危機を訴え、早急の改善をキャンペーンしてきたNPO、エイジUKなどは一応、好意的に政府案を歓迎はしたものの、大きな落胆を隠せない。虐待対策の法定化や個別予算の権利化、介護者の権利強化、ケアの質の改善につながる対策などがふくまれてはいる。しかし、財源問題について不明な点が残る。ケアホーム費用支払いに生存中の自宅売却が免れるようになるとして、その支払いのローンはどのような形になるのか疑問がだされた。

ガーディアン紙はwww.guardian.co.uk/society 「大臣が『高齢者は介護保険に加入する選択ができる』と言う」(この制度にはいることで、高齢者は保険料(プレミアム)を払い、ケアホームへの入居費用支払い総額が一定額を超えるとそれ以上支払わなくてよくなる)という11日の記事で、「今回の提案は任意加入で普遍的な制度にならないので、ディルノット委員会の前に後戻りとなった」というシンクタンク、キングスファンドの批判を載せている。

また、ケアホーム入居費用自己負担限度額や資力調査の財産保有限度額の引き上げ額が出されていないことも大きな不満の理由になっている。保健大臣は政府の次回の包括的支出見直しのときに行うのがいいだろうと言明を避けているという。いったい本当にやる気があるのかという苛立ちの声さえも上がっている。またしても根本の解決が先延ばしになったという感はまぬがれない。保健大臣は8割以上の自治体が重度のケアニーズがある人たちにのみケアを提供している現状を変え、最低限のケアレベルを設けると言及しているが、今現在、厳しい緊縮財政下で十分なケアサービスを受けられないでいる大勢の人たちの毎日はなかなか解決されそうにない。


2012.05.30 ケア財源不足への根本的取り組みを求める

政府の約束したソーシャルケアの将来に関する白書発表が遅れている。この白書は、法律委員会の法制度に関する成人ソーシャルケア改革勧告(2011)と、ディルノット委員会の成人ソーシャルケア財源検討書(2011)に対して政府がどう応じるかという政策文書で、成人ソーシャルケアの今後の改革のあり方を決めるものだ。

これまで、この来るべき白書に影響をおよぼそうと、数々の関係団体が文書で意見表明してきた。ケアの財源改革を政府がないがしろにする可能性を懸念したナフィールド・トラスト www.nuffieldtrust.org.uk も、この5月にReforming Social Care: Options for fundingという文書をだしている。

主なポイント

●ケアの財源不足が今まで以上に深刻化しており、早急の改革が必要である。

●改革なしでは事態は悪化するばかりである。2010年度の国のケア支出費は146億ポンドだったが、2025年度には230億ポンドが必要と試算されている。

●ディルノット委員会は低所得者に公的助成を増やし、高額の入居ケア施設費用に関してはすべての人に助成するように改革するよう提案した。これらの提案は各関係者から賛同が表明された。

●短期的には国営医療制度NHSの未使用予算をケアに回す。またケアサービスの生産性をあげる。医療や社会保障の予算を、ソーシャルケアに分配することを検討する。

●高齢者に国は年間総額1400億ポンド(年金、医療、ケアなど)を支出している。ソーシャルケアに関する支出はそのうちの6%のみである。裕福な高齢者が受け取っている福祉関連給付(バスや鉄道の無料定期など普遍的な給付がある)を政府は見直しソーシャルケアの改革にまわすことも考慮すべきである。また医療の予算の一部をより効果的につかうため、予防的ソーシャルケアにまわすことを検討すべきである。

●どうしてもケアの財源が不十分な場合は、増税が検討されるべき、特に裕福な高齢者への増税を視野に入れるべきである。

●政府はもっとケアの財源について国民と話し合いを進めるべきである。個人の負担分についての議論はかなり行われたが、公的助成の増加の必要性についてはあまり触れられていない。

●ケアの質の改善にも焦点を当てる必要がある。ケアの質が悪いと見られれば、国のケアの支出に対して、個人の負担を増やすことを求めるのはいっそう難しくなる。

2012.05.18

www.cabinetoffice.gov.uk


2012.05.26 ケアホームの入居者の医療ニーズについて

ケア監査委員会 www.cqc.org.uk が、ケア施設の入居者の医療ニーズが満たされているかどうかについて検討した内容を、報告(Health care in care homes)している。

主な内容

●77%のケア計画は入居者の見解を考慮に入れているように見られる。

●96%のケアホームは入居者の医療ニーズの変化を非公式そしてきめこまかなモニタリングをとおして発見している。

●4分の一の入居者は、排泄介助を受けるにあたり、介護者の性別を選択できるとは感じていない。

●44%のケアホームは家庭医の定期的な訪問を受けているようである。

●30%のナーシングホームは、「蘇生の試みを希望しない」表明についての手続きがない。これらの施設の職員でこの事項について研修をうけているのは37%だけであった。

●35%のケアホームは、ときどき決まった時間に与薬ができない、遅れるときがあると報告している。

●10%のケアホームは家庭医診療所に往診のための費用を払っているという。


2012.05.23 障害児童の家族の7分の1家族が貧困から食事に困る

NPO、コンタクト・ア・ファミリー www.cafamily.org.uk の調べによると、就労者のいる障害児童の家族の14%が時々食事をしない。また17%は暖房を十分にできない。

障害児童のケアのために就労ができない家族の場合は、24%が食事ができないときがある。32%が暖房が十分できない。障害児童のいる家族は交通費や特別な食事や衣服など健常児童より3倍ほど費用がかかる。29%の家族が高額ローンや友人から借金しており、41%はガスや電気料金の支払いなどが遅れているという。

同NPOは、政府が新しい社会保障給付制度を導入するにあたり、障害児童の家族への経済的支援が減らないよう、新しい制度の枠組みの中で追加支援するよう訴えている。


2012.04.23 認知症虐待のケアワーカーに懲役18カ月の刑

4月13日、認知症の80歳の入居者虐待の罪で、ロンドン、カムデン区にある施設のケアワーカーが懲役18ヶ月の刑を言い渡された。

昨年の6月、虐待の疑いを持った娘さんが部屋に隠しカメラを仕掛けたところ、身体的な虐待が記録されていた。その内容は4月23日、パノラマというテレビのドキュメンタリー番組でも報道された。ケア監査委員会 www.cqc.org.uk から通報を受けた警察とカムデン区の虐待対策チームが同施設を訪ね、1人を逮捕した。同施設は虐待の現場にいた他の4人のケアワーカーも解雇したという。

ケア監査委員会は警察の捜査を待って監査に入り、しばらく監視を続けたが、他の虐待の実態はないと結論を出した。コミュニティケアによると、ケア監査委員会は「このような虐待は管理者や監査官の前ではおこらないので見つけるのは難しい」と言い、施設側は「この事件は特別なケースで、専門的に、かつ規則に従って運営していても、こういう個人が犯罪行為をすることがありうるという教訓になった」と言っている。虐待を防ぐための十分な努力、手続きは確かになされていたのか。なんとも納得しがたいコメントに思われる。

ケア施設親族入居者協会 www.relres.orgは、「年に1回の監査訪問は十分ではない、過去のように年に2回の監査訪問を回復すべきだ」と主張し、ケア監査委員会の抜本的な改善を求めている。


2012.04.12 真夜中に退院させられる高齢者たち

グラスルーツの影響力を重視する医療政策に関するシンクタンク‘2020ヘルス www.2020health.orgがタイムズ紙の調査報道の「40万人の患者が毎年、真夜中にNHSの病院から退院させられている」に応じて、「真夜中、高齢者に退院を強いるのをやめよう」というキャンペーンを張っている。

入院患者の7割は高齢者であることから、真夜中退院させられているのはたいていは65歳以上の高齢者だろうという。‘2020ヘルス’は同サイトに各地のNHS病院に、夜中に退院をさせないという同意をとりつけるための手紙の素案を用意して、実際に手紙をだすよう呼びかけている。


2012.03.27 ヘルス・アンド・ソーシャル・ケア法2012年が成立、NHS改革本格的に

NHSのあり方が根本的に変わることになるヘルス・アンドソーシャルケア法2012年 www.dh.gov.ukがロイヤル・アセントを得てようやく成立した。これほど難航した法律はないといわれ、修正がなされ、上院と下院をいったりきたりし、廃案にすべきというごうごうの非難をあびたあげくの成立であった。

保健省の同法の要約にはこうある。

●権限を現場の医師や看護士に委譲する。彼らは地元の患者にあうように、地元のヘルスサービスを自由に発案計画することができる。

●サービスが統合されるように心する。各種サービスの統合を進めるような義務を導入する。

●公共衛生を強化する。各地の公共衛生事業を従来の国の事業から自治体に移管する。それによって、各自治体はNHSの仕事、ソーシャルケア、住宅、環境衛生、レジャー、運輸などを総合的に事業運営できるようになる。

●患者により多くの情報と選択を与える。NHS医療機関の業績をより開示するとともに、患者が選べる他の医療機関の情報を提供する。また全国、そして各地のヘルス監視機関をとおして患者が意見を言いやすくする。

●地域のデモクラシーを強化する。各地にできるヘルス監視機関とヘルス・アンド・ウェルビーイング委員会のそれぞれに少なくとも1人の自治体議会議員がメンバーとして入る。

●事務管理手続きを減らす。これまで地域医療の計画・事業委託を実施してきたプライマリ・ケア・トラスト、そして各地方ごとの地方戦略局を廃止する。


2012.03.29 在宅ケア利用者の方が施設入居者より入院する率が高い?

ナッフィールド・トラスト www.nuffieldtrust.org.uk が75歳以上13万2055人を対象にして、その医療と介護の記録をリンクして分析を行った。それによると、重度の在宅ケアを受けている人の方がケア施設入居者=自治体助成に比べて、病院へ入院する割合が78%対58%で高かった。さらなるリサーチが必要とはいえ、この分析は介護予算を減らすことで、入院が増え、結局は国営医療制度NHSの負担を増大させることになるという指摘を支持することになった。


2012.03.27 自由剥奪の手続きがおろそか、職員の研修充実が必須

ケア・クオリティ委員会 www.cqc.org.uk が、自由剥奪の手続き(通称Dols)に関する2010年度報告書で、ケア・ホーム(入居ケア施設)の多くがこれについて十分な研修をしておらず、悪いケアの実践と人権侵害につながっていると指摘している。ケア・ホームは意思能力に欠けるためケアや治療に同意できない入居者の自由を剥奪するかもしれないとき、自治体に申請しなければならない。

施設によっては、職員たちがいまだに自由の剥奪になるかどうか考慮することなく、入居者をベッドに拘束したり、個室に鍵をかけてでられないようにするなどしているそうだ。「自由の剥奪」への理解がいろいろで、まだ徹底していないという。


2012.03.26 認知症研究予算を増やすなど、認知症について首相が表明する

3月26日に開催された認知症会議のスピーチで、キャメロン首相は認知症研究費を増大させること、ケアの質の改善、認知症の認識を高めること、そして認知症患者にやさしく住みやすい地域の開発に挑戦することを表明した。と同時に、アルツハイマー協会 www.alzheimers.org.uk は画期的なリポート、Dementia2012: A national challenge を発表した。これには認知症に関する統計や政策、研究と幅広い情報が組み込まれている。同協会はこれを毎年更新し、認知症患者がどのように暮しているかを明らかにし、その進展をフォローできるようにする計画だ。


2012.03.19 認知症高齢者などへの個別予算制度あり方の見直しを訴える

成人社会サービス部長協会 www.adass.org.uk が実施の確実になったヘルス・アンド・ソーシャルケア法(まもなく正式成立予定のNHS大改革案)や近々発表予定の成人ケア白書やケア財源についてのディルノット委員会の報告書への政府の回答、福祉制度への法律委員会のリポートなどを踏まえ、ドキュメントThe Case for Tomorrow: Facing the Beyond を発表し政府への要望を明らかにした。

第一に注目されたのは、「個別予算制度」パーソナル・バジェットにおいて選択や自己管理を現実に可能にすること、そして虚弱または認知症高齢者の直接現金給付制度を全面的に見直すよう訴えているところだ。他の要点は、「ソーシャルケアへの投資の拡大と財源についての検討」「保健と福祉の統合への障害をとりのぞく」「地域ベースのサービスにインセンティブを与えるようにする」「高齢期に対する思い込みを変えること、高齢者が国家に期待できることと本人に期待されることについて法律委員会の勧告を法制化し明確なガイドラインを出す」などである。

また協会長のピーター・ヘイさんはまもなく正式に成立するヘルス・アンド・ソーシャルケア法の実施が保健福祉サービスの統合を妨げることになるのではないかと警告している。                                           

2012.02.23 その機能が問われるケア監査委員会

医療福祉サービス提供者、公立、民間すべての組織を登録規制するケア監査委員会CQCは設立3年になる。 www.cqc.org.uk   そのトップのシンシア・バウアーさんが辞任を余儀なくされたようだという報道があった。BBCの潜入取材で暴露された施設での深刻な知的障害者虐待への対応ミスのスキャンダルなどで、CQCは厳しい批判を浴びてきた。バウアーさんの能力や姿勢への批判もあるようだが、個人をこえた問題、CQCに求められている巨大な事業内容やそのための予算に無理があるのだという指摘も強くある。

一般に、公共サービス規制はライト・タッチ、低コストがうたい文句になり、CQCにあってもケア・サービスの質の内容を直接に監査官が出向いて調べるという手続きを省く傾向をもたらし、新規事業者の登録、書類上での評価などに重点が置かれることになったといわれる。1990年前半までの、各自治体や保健当局が監査官を雇用し登録監査を実施していた時代は、予告あり予告なしの監査を毎年行っていた。その当時は各地によって、または監査官によって監査のやり方や解釈が異なることや、まちまちな監査官の教育のありようなどが問題視されていた。それが前政権のケア・サービス現代化政策のもと、監査の仕組みが全国的な組織として統一され、やがて児童福祉が分離して教育監査の管轄に吸収される一方、2009年に医療と福祉が統合され包括的な巨大な事業内容を実施する組織になった。

度重なる組織再編を経て、一体、ケアの質は向上したのだろうか。近く発表されるというCQCについてのリポートがどのような方向性を示すか興味深い。ケア・サービスの利用者の人権が正しく守られるために、改善の余地が大きいことだけは確かだ。


2012.02.13 認知症患者虐待で施設介護職員が1年の実刑

週刊誌コミュニティケア  www.communitycare.co.uk  によると、ケアホームの職員が医師能力法2005年の7項目の虐待の疑いで、1年の実刑を言い渡された。マルコム・クランプは匿名の訴えを発端に2010年1月に逮捕された。施設の入居者を毛布で椅子に縛り付けたり、ベッドのマットレスに布団をたくし込んで起き上がれないよう拘束したり、明かりをつけておきたいという入居者の意思を無視して消灯したりなどしたという。

認知症患者が被害者とあって、十分な犯罪証拠が提出できるかどうか難しいところだったが、警察、関係者の懸命の努力で、陪審員を納得させることができた。今回の実刑判決が、認知症患者虐待の予防につながることが望まれている。


2012.02.03 変わりつつあるソーシャルワーカーの役割

設立まもないソーシャルワーク大学 www.collegeofsocialwork.org が成人社会福祉におけるソーシャルワークの役割を擁護するためのキャンペーンを始めた。ケアセクターの主要関係者が招待されて行われた立ち上げサミットでは、会議進行役が、ソーシャル・ケア担当大臣がこの春に発表予定のソーシャルケア白書で‘ソーシャルワーク’がその政策の中心に位置することになると約束したということを報告した。また、会議の基調演説を行った保健省の役人が「ソーシャルワークにとって、今は重要でエキサイティングな時代であると思う」と述べた。「ケアの配給(ケアマネジメント)!からコミュニティ・デベロップメントへ」、そして対象者の自律や人権を支援していく側面が再確認されていくことになるだろうという。

90年代のケアマネジメント導入に始まり、ダイレクト・ペイメント、個人予算、パーソナライゼーションと実施されるなかで、ソーシャルワーカーの役割、アイデンティティに混乱がみられた。今回の白書は歴史的にもソーシャルワークの新たな転回点になりそうだ。 


2012.01.31 メンタルヘルス財団が意思能力法、行動指針の修正を呼びかける

意思能力法(2005年)とその行動指針の効果性を確かめる調査研究の結果を、メンタルヘルス財団 www.mentalhealth.org.uk が発表した。

2年かかった報告書の主な内容は、「マイノリティではあるがかなりの数の人が間違って意思能力なしとみなされている」「本人にとって最善の利益を判断する上で、現状のやり方とは異なる良い方法がある」「ケア従事者はサービス利用者の自律性と保護のバランスをとるうえで意思能力法は役に立つと考えている」「ケア従事者は行動指針や研修は彼らの実践に関連があると価値づけているものの、実際のケースはさらに複雑であると指摘している」など。

同報告書は、そのような内容を踏まえ、保健医療、福祉サービスの従事者がより効果的な「対象者本人(意思能力がないと評価された人)にとって最善の利益となる決定」を行うための行動指針の修正を呼びかけている。また「意思能力」の定義をより明確にすること、行動指針に意思能力有無の評価や最善の利益の決定にかかわる例をさらに増やすことなども求めている。行動指針は同法が成立する以前につくられたもので、法施行によっていろいろ問題が浮かび上がった。改善が求められるのは当然のなりゆきでもあるようだ。


2012.01.30 深刻な高齢者ケア財源不足

Age UK  www.ageuk.org.uk  が Care in Crisis 2012 report の中で、高齢者ケアの費用が5億ポンド不足しているという分析をし、ケアが危機状況にあると警告している。

2010年度と同じケアサービスを維持するためには、同組織の算出によると2011年度には78億ポンドの財源を必要とするはずだが、政府の緊縮財政で自治体の総合予算は73億ポンドに縮小している。後期高齢者の人口は増え続けサービスへのデマンドは増加する一方だ。が、自治体はその高齢者ケア予算を3億4100万ポンドカット。実質的に4.5%の削減になっているそうだ。

削減をどのように行ったかを明らかにするのは難しいというが、成人社会サービス部長協会の調査によると、23%の節約を実際のサービス縮小で実施したという結果がでている。同リポートによるとケアを必要とする200万の高齢者のうち、その4割がフォーマルなケアは何も受けていないという。


2012.01.03 ソーシャルワーク大学がいよいよスタート

 ソーシャルワーク大学www.collegeofsocialwork.orgがイングランドで本格的に事業を始め、有料で会員の登録を開始した。

 同大学の設置は、2009年にソーシャルワーク・タスクフォースが、ソーシャルワーク専門職を代表し支援する独立の強固な組織を設けるよう提言したことが根拠になっている。会員制組織で、会員によって主導され、会員に対して説明責任がある。その存在目的は専門職の基準を維持し、専門職をそして専門職がもたらす利益をプロモートすることだ。

 同大学は、自らの存在意義を専門職への助言や法廷での代理などではないと強調し、それらを実施内容とする組合や専門職協会への加入を勧めている。その裏には、今後の導入が懸案になっている大規模組合ユニソンとの共同会員制や英国ソーシャルワーカー協会との統合など、難しい駆け引きが続けられているという事情があるようだ。


2011.12.14 アルツハイマー協会が認知症患者の金銭的虐待からの保護を求める

アルツハイマー協会www.alzheimers.org.ukが、自治体は認知症患者を詐欺などの犯罪行為から守るためにもっと積極的に関わっていくべきであると呼びかけた。同協会のリポートShort changedによると、認知症患者は孤立と金銭管理の能力が衰え、他者に金銭管理を頼ることになることなどからも金銭的虐待にあう可能性が高まっている。調査対象になった介護者の15%が被介護者が金銭的虐待を受けたことがあり、62%が似非建築業者などの詐欺的試みの対象になったと回答している。

またこれまで認知症患者が詐欺行為で失った総額は、およそ1億ポンド以上になるだろうという。円高で現在1ポンド130円たらずだが、130億円以上というたいへんな被害金額になる。


2011.12.07 自治体の人員削減が急速に進む

監査委員会www.audit-commission.gov.ukと地方自治体協会の共同調査による報告書Work in Progress: Meeting Local Needs with Lower Workforce Costsが、過去1年で、イングランドの自治体では15万人近い人員削減があったことを明らかにしている。

自治体は人材派遣業者の利用や超過勤務を制限して、解雇を避けるよう努力しているが、さらなる解雇はさけられないだろうと予測している。ソーシャルケアの職員もこれら大規模削減の対象である。


2011.11.29 厳しい緊縮財政2017年まで続く

当日なされた財務大臣の秋の声明によると、自治体は、2013年度と2014年度には、予想されていた財源よりも5億ポンド減額の予算を政府から受け取ることになるという。

コミュニティケアwww.communitycare.co.uk は、同大臣は2015年度と2016年度は公共支出は0.9%の削減になると予想しているが、実際にはそれぞれ3.5%、2.7%の削減になるはずだと指摘している。2017年まで、異例の6年間という長期にわたり、予想以上の厳しい支出削減が続くと見られ、ソーシャルケアへの深刻な影響が憂慮されている。予防的ケアにも手がまわらないことになりそうだ。



2011.11.20 個人予算制度の来年度完全実施を控えアルツハイマー協会が勧告

アルツハイマー協会www.alzheimers.org.ukが2010年後半に実施した調査をもとに「個人予算」事業(国は自治体に対し2013年からの完全実施を求めている)についての要望、示唆を文書 Making personal budgets  for people with dementia (認知症患者が個人予算を使いやすくする)にまとめホームページに公表している。

それによると調査回答者1432人のうち、204人はケアサービスを購入するのに個人予算または直接現金給付制度を使っていた。回答者のうち全部で878人がケアニーズの審査を受け何らかのサービスを受けており、個人予算などを使っているのはその23%に過ぎない計算だ。なお、130人は個人予算などの選択を与えられたが断ったという。つまりそうした選択を与えられなかった人は6割になる。1人暮らしの場合、また高齢者の場合、特に同制度の選択を与えられない傾向にあるようだ。

今回の調査からは、個人予算制度の認知症患者にあわない複雑でストレス多い仕組みが、バリアになっていることが浮かび上がった。本人や介護者への制度を使う上でのサポートも不十分。いまだに認知症への理解の低さや法制度変更への理解の遅れなども問題だという。その他には、各地のケア市場で認知症患者向けの多様なサービスが開発されていない、給付金が低くニーズを満たすサービスを購入できない、サービス受給資格が厳しすぎるなどの点が上がった。

これらをふまえて、同協会は「個人予算」制度が認知症患者の特別なニーズに合うようにすること、市場を開発することなどを提言した。


2011.11.15 サービス削減による高齢者のウェルビーイングへのインパクト

高齢者のために活動を続けて70年になる民間非営利組織WRVSが最近のリサーチの結果 Shaping Our Age - Voices on Well -being を発表した。www.royalvoluntaryservice.org.uk 保健医療や福祉サービスなど公共サービスの高齢者のウェルビーイングに及ぼすインパクトを高齢者たちから聞き取ったものだが、ネガティブなことがらが数々あげられた。ただ厳しい財政のもとサービス削減が実施される中、予想される内容ではあった。

回答者たちは健康面に大きな関心があるため、家庭医診療所の受診の予約がとりにくかったりコミュニケーションが難しい場合にかなりのネガティブな影響を受けている。それがうまくいっている場合には当然、ポジティブな影響になる。皆共通して言及しているのは病院職員の処遇の悪さや不衛生、障害の理解に欠く、また高齢者への差別的態度や尊敬や共感の欠如なども指摘されている。福祉の場でもケアの質の悪さが指摘されている。

その他には公共交通機関の非効率、不規則性、アクセスのまずさなども高齢者のウェルビーイングに影を落としている。また公共支出削減でコミュニティセンターや図書館、郵便局などが閉鎖されるのではという不安が広がっている。情報提供やコミュニケーションの電子化が進み、高齢者がサービスについての情報を得るのが困難になっているという点も見逃せない。

今も貧困問題、そしてとくに外出困難者の孤独と孤立は深刻で、財政困難によるサービス削減が状況をさらに悪化させるのではと心配されている。


2011.11.11 暫定的イングランドの成人虐待統計出る

国営医療制度のNHS情報センターwww.ic.nhs.ukが2010年度のソーシャルケア統計の暫定的な リポートAbuse of vulnerable adults in England 2010-11: Experimental statistics provisional report を公表している。最終報告は来年3月に出る予定。今回のリポートは、初めて国が自治体に成人虐待に関する統計の提出を義務付け集計したものである。2008年から2010年までは試験的な実施は行われていた。またこの統計も暫定的実験的な統計という位置づけで集計のあり方が評価され改善につなげるプロセスにあるという。

自治体の虐待対策成人保護部(151自治体)に紹介があったのは96000件。39%が18-64歳、26%が85歳以上、23%が75-84歳、12%が65-74歳。身体障害のある人が49%、精神疾患のある人が23%、知的障害のある人が21%、薬物依存症などが7%。ケースの紹介者は保健福祉の職員が44%、家族が8%。そのうち13900件は過去に紹介のあったケースだった。精神疾患患者や知的障害者の場合、繰り返しの紹介件数が高い傾向にある。

紹介記録からは次のような数字が集計されている。虐待のタイプは身体的なものが39%と最も多い。次はネグレクトで28%、そして経済的虐待が24%、情緒的心理的・性的虐待が19%、制度的・差別的虐待が12%。合計100%を上まわるのは1つのケースが複数の内容からなるためという。虐待の場は、自宅が42%、入居ケア施設が35%。病院などその他の公共の場が26%。これも100%を上まわるが上記と同じ理由からである。虐待者は、医療福祉職員が29%、家族が25%、他の虚弱な人が13%、隣人・ボランティア・友人・他の専門職・見知らぬ人が12%。その他が8%、不明が14%。

なお、集計期間内に96000件のうち手続きが終了していたのは75000件である。虐待の内容を調査した結果は、被虐待者に対しては、とくに行動をとらない(31%)、監視の強化(26%)、その他(13%)、地域ケアニーズ審査とサービスの実施(10%)である。各ケースの調査手続き終了後、保護計画を提供されたのは54%、その計画を受け入れたのは58%だった。


2011.09.14 うまくいっていないケアの監査

医療福祉サービス提供者の登録や監査を包括的に行うケア・クオリティ委員会www.cqc.org.uk  が批判を浴びている。国会のヘルス特別委員会が、その報告書Ninth Report: Annual accountability hearing with the Care Quality Commission で、ケア・クオリティ委員会は、新たな仕事として歯科医などを登録する必要性などから、その事務手続きに追われ、肝心のサービスの質の監査を怠っているという指摘を行った。

2010年10月に、それまで医療と福祉などに分かれていた監査委員会が統合されてできたケア・クオリティ委員会だが、その運営は難航している。今年5月には、コミュニティ・ケア誌が、ケア・クオリティ委員会は発足して6ヶ月の間に監査率が7割も落ちたと報道した。先の報告書は70人の監査職員を求人するのに8ヶ月もかかっているのは受け入れががたいとしている。

効率的な監査や登録のための戦略、内部告発にオープンなケアの現場の文化を築くことなど、ケア・クオリティ委員会の課題は重く、緊急を要している。


2011.09.05 予算削減で在宅ケアサービスの困難深まる

英国在宅ケア協会www.ukhca.co.ukの調査が、在宅ケアサービス利用者の最近の困難な状況を明らかにしている。

調査対象111自治体などの8割強が、利用者に割り当てられた訪問時間を、対象者によってはなんらかの形でカットしている。その結果、ホームヘルパーの平均1回の訪問は48分から38分に減るとともに、安全チェックのための訪問数が減っている。一方最も短い15分単位の訪問は増え、4分の3の自治体が一対象者への1日の訪問回数を減らしている。

また田舎では自治体の支払いの低料金化と、訪問時間の短縮化で訪問先への車での運転時間の方が長くなるなど、採算が取れなくなるような状況がおき、かなりの業者が廃業しているという。


2011.07.04 ケアの財源について検討したディルノット委員会報告書出る

ケアの財源を調達する仕組みをどうするかを検討していたデルノット委員会が、この7月4日に政府へ勧告書Fairer Funding for Allを提出した。www.dilnotcommission.dh.gov.uk?our-report/ これまでも、この問題に関しては前労働党政権が王立委員会を設置するなどして検討したこともあったが、解決策を見つけることなく今にいたっている。

ディルノット氏を委員長とする同委員会は現状を「理解しにくい仕組みで、しばしば不公正で、かつ維持しがたい制度であり、改革が緊急に必要である」とし、次のようなこと(など)を政府に勧告している。

●サービス利用者個人が生涯に負担するソーシャル・ケアの額に現在は制限がないが、これに制限を設けるべきである。その最高限度額はおよそ35.000ポンドが妥当であると委員会は判断している。

●現在資力調査で23,250ポンド以上の資産(土地家屋などを含む)を有している個人は全額自己負担となっているが、これを100.000ポンドに引き上げるべきである。

●全国一貫性を保つため、全国サービス受給要件の導入するとともに、他の自治体へ移動するとき、一度受けたアセスメントをそのまま持ち込み、再アセスメントを受けずに、移動先の自治体でも効力があるようにするべきである。

●ケアと支援が必要な個人が成人したとき、資力調査なしで、ただちに全額公的負担とすべきである。

同委員会の推計では、これらの提案(35.000ポンドの個人負担限度額を設けた場合)を実行すると、国の負担は17億ポンドになるという。ディルノット委員長は「この制限導入が実施されれば、人々の多くの資産が守られ、もはやケアの費用にすべてを失うかもしれないと恐れなくても良くなる」と語っている。

しかし、9月16日のイブニング・スタンダード紙のアンソニー・ヒルトン氏のコラムはこれでは解決にならないという。メディア、そして一般は、ケア費用に5万ポンドくらい払えば、あとは国が払ってくれるというふうに把握している。実際には5万ポンドよりずっとかかるから、まあまあこれで解決だというふうに思うかもしれないが、国が負担する分は「ソーシャル・ケア」の費用であって、ホテル・コストは入っていないことを見落としてはいけないと指摘する。確かにそのとおりで、同氏によれば「良い質のケアホームの年間費用は5万ポンドほど、そのうちソーシャルケア・コストは3分の1(17.000ポンド)ほど」という。施設入所した場合、やはり、家屋などを売却してケア費用を負担することになるかもしれないという不安が解決されることにはならないようだ。


2011.06.01 知的障害者への虐待が秘密カメラ取材で明らかに

BBCのパノラマというドキュメンタリー番組はさまざまな社会的問題を調査報道しているが、昨日はブリストル市のウインターボーン・ビュー病院の知的障害のある患者たちが職員から虐待を受けている様子を秘密カメラで撮影した内容で、視聴者はみな大変なショックを受けた。その後も、体を引きずられたり、嘲笑されたり、服のままシャワーをあびせられたりして叫ぶ患者の姿がニュースで繰り返し流された。

同病院の職員の1人が内部告発をして、病院運営者やケア監査委員会(CQC)に訴えたが、適切な反応をえられず、BBCに相談して、今回の秘密カメラ取材によるプログラムにつながった。

番組の後、すぐに4人の職員が逮捕されたと報道されている。またCQCは謝罪するとともに、同病院への新規の入院を当面禁止し、CQCが内部告発した職員の訴えについてどう対応していたかについて調べている。


2011.06.01 ケアホーム入居者3万1千人を抱える会社が経営困難に陥る

ケアホーム、最大手のサザンクロスが施設建物の賃貸料を払い続けることが困難になり、入居者3万1千人が不安定な状況に陥っている。同社は6月1日から9月30日までの毎月の賃貸料の30%を支払い延期し、この間、構造改革を試み、関係者と話し合いをもち7月にどのような改革をするか発表するという。

なにしろ、3万1千人の毎日のケアと生活にかかわることなので、メディアは大きく取り上げた。インタビューを受けた家族は「施設閉鎖で移動するようなことになれば命に関わる」と危機感をつのらせている。今回のような経営難が生じたことに関わり、同社が過去に施設建物を売って利益を上げるような経営モデルをとっていたことを非難されている。一方、自治体の支払う入居費の抑制、また入居者の削減による占有率の低さなどが経営難の要因になっているとも指摘されている。


2011.05.11 戦後60年の間に複雑化した成人社会福祉の法制度を包括的改革するための勧告

5月10日、ロー・コミッション(法律委員会)www.lawcom.gov.uk が3年間の検討を続けた結果、戦後60年あまりの間に複雑化し、かつ時代にそぐわなくなった成人社会福祉の法制度全般を包括的に改革するリポートThe law Commission (LAW COM NO 326) Adult Social Care を国会に提出した。イングランドでは来年度に、この76項目の勧告に基づき、新しい法制定を進める予定だ。ウエールズも別に勧告を検討しなければならない。

チャリティ団体、障害同盟 www.disabilityalliance.org の解説によれば、同リポートは、一本化した成人ソーシャルケアの法律の制定を勧め、かつ3つのレベル(法律、規則、行動指針)の改革を勧めている。

法律に関しては「個人が地域ケアサービスによって満たされるニーズを持っていると自治体が見なす場合、自治体が単一の明確なアセスメントの義務を負うようにする。本人の合意がなくても義務は発生する、が本人が拒否すれば、虐待などの懸念がない限りその義務はなくなる。ウェルビーイングの定義は法律で定めないが、そのチェックリストを次のように設ける。●個人に関する決定がなされるときはキャパシティが欠如している例をのぞき本人が判断者としてベストである、可能な限り本人の見解、望み、感情を尊重する。●年齢や見た目や行動にのみたよらず、本人の置かれた状況をもとに物事を決定するようにする。/ 本人の参画 ●他者のウェルビーイングと本人のそれとのバランス●虐待からの保護●人権に関わる介入を行うときは自由拘束を最小限にするようにする。その他」

規則に関しては「法律によって、大臣がコミュニティ・ケア・サービスの受給資格要件のフレームワークを定めた規則を作るよう求め、それに基づいて各自治体が独自の要件を設置するようにする。自治体はアセスメントに基づいて対象者のケアニーズが要件にかなっているかどうか決定し、要件にかなっているニーズを満たすためサービスを提供またはアレンジすることを求められる。」そしてコード・オブ・プラクティス(行動指針)においては、自治体がどのように資格要件を設置するかを特定する。

76の勧告の中には入居施設費用への直接現金給付適用や、成人虐待対策委員会の法定化なども含まれている。これらの勧告が政府によって受け入れられれば、成人虐待対策が初めて正式に法に定められることになる。


2011.04.28 現場の資源削減で児童虐待予防が困難

英国ソーシャルワーカー協会www.basw.co.ukのプレスリリース Cuts to frontline services make child abuse possible は、ケント県の小児愛嗜好者をめぐる不祥事について言及して、ソーシャルワークのあり方の真の重大な改革が絶対に必要であると指摘している。

同文によると、ケント県は、職員配置と資源の不十分さのためアセスメントが効率的に行われなかったことが失敗の主要因であることを認め、謝罪しているという。英国ソーシャルワーカー協会の事務長は「今回の悲劇的な例は自治体の社会サービスを  している問題の一例だ。社会サービス費の削減は虚弱な人たちの安全を危うくすることになるということに自治体が気づくためにはいったいどんなことがおきればいいといいうのか?真の改革なしでは失敗は繰り返され、虚弱な成人や児童は危険にさらされ続ける」と警告している。制度の不適切さと資源の欠如に悩む現場で、ソーシャルワーカーは不可能ともいえる状況に立たされているという。


2011.04.19 児童の教育福祉監視機関を2つの組織に分けるよう勧告

国会の下院教育委員会Education Committee www.parliament.uk が、イングランドの教育と児童福祉サービスを規制するOfstedは規模が大きすぎ、コーディネーションや全体性に欠くので、教育と福祉の2つに分かれるべきだとリポートThe role and performance of Ofsted で勧告した。同委員会はOfstedが教育と福祉の両方を傘下にしたその継続性を十分に生かしていない、そして前の組織にはあった福祉分野での監査の専門性を失っているとも批判し、違う領域には異なる監査の体制が必要であると論じている。監査の質と関係者の信頼回復のために分離を勧めている。政府は勧告を考慮し、おってどう対応するかについて回答するという。

Ofstedは2007年に教育省が児童福祉サービスの責任を保健省から引き継いだとき、やはりその役割の幅を児童福祉サービスにも広げた。それが、今回見直される形となったわけだ。


2011.04.11 成人対象のソーシャルワーカー独立事務所試験事業

英国ソーシャルワーカー協会www.basw.co.ukのウェブサイトのニュース  Minister announces locations of adult social work practice pilots によると、ケアサービス担当大臣、ポール・バーストウ氏がソーシャルワーカー独立事務所の試験事業計画を発表した。事業はバーミンガム市、ロンドン、ランベス区など6ヶ所で実施される。独立事務所の対象者は視聴覚障害者のみまたは成人すべてなど、事務所によって異なり一様ではない。

事業はこの夏から開始され保健省から100万ポンドの助成金が出る予定だ。事業の目的はソーシャルワーカーたちが自治体の管理下をはずれ、独立のグループを設立することで、大組織につきものの事務の煩雑さなどを縮小し、本来の専門職業務に専念することである。バウストウ氏は事業計画発表にあたり「連合政府は、ケアサービスの利用者がケアと支援をよりいっそう自分の望むようなあり方で受けられるようにしていこうと決意している」「われわれは今後、ソーシャルワーカーたちがケアサービス利用者の独立を援助するために最善を尽くせるような状況を作っていく計画である」と述べているという。

児童のソーシャルワークについては先行して同様の試験事業が実施されているが評価報告はまだ発表されていない。コミュニティケア誌によると、評価の定まらないこれら児童の先行事業に基づいて成人の独立事務所試験事業が実施されることについては、批判もあるようだ。


2011.04.11 ソーシャルワーク資格取得後の継続教育制度に不安

連合政府の保健福祉改革政策を実施するためのヘルス・ソーシャルケア法案(2011)

www.dh.gov.uk が審議される中でさまざまな波紋が広がっている。現在、ソーシャルワーカーの資格取得後の研修コースを認定しているのは同職種を登録規制している総合ソーシャルケア協議会GSCCだ。が、同協議会は2012年4月には廃止される予定で、その全体的機能はヘルス専門職協議会HPCにうつされる予定である。

問題になっているのは、HPCが資格取得後研修コースを認定する機能は、受け継がないことだ。コミュニティ・ケアwww.communitycare.co.ukによると、ソーシャルワーカー団体やソーシャルワーク改革評議会、GSCC、大学関係者などがソーシャルワーカー向けに、資格取得後コースへの信頼を失わないよう呼びかけている。なおソーシャルワーク改革評議会は、より効果的で一貫した資格取得後研修コースの枠組みFramework for continuing professional development  www.education.gov.uk  を開発しているところで、これが従来の仕組みの上に継続して確立されることをめざしているという。


2011.03.31 ケア・クオリティ委員会による新しい成人ソーシャル・ケアの質評価事業

ケア・クオリティ委員会www.cqc.org.ukは、先月、成人ソーシャル・ケアサービス提供者の新しい質の格付け事業を導入することを発表していた。本日、その内容が明らかになった。

同ウェブサイトのプレス・リリースによると、新たな格付け事業は、従来の段階付け評価ではなくエクセレンス『優秀』の格付けのみで、同委員会が複数の組織に同時に格付け事業許可を与えることによって運営するという。応募する事業者にはケア業界の知識だけでなく監査手続き分野でのこれまでの経験蓄積が求められる。この4月から競争入札を開始し、夏までには事業者に許可を与え、来年度4月には格付けのアセスメントのデザインそして試験を終了して、正式に事業開始というのが目標になっている。

在宅、入居など多様なソーシャル・ケアケアサービス提供者がこの格付け事業の対象になるが、応募は義務ではなく、さらにある程度の料金を支払うことになる。同委員会への登録料に加えて格付け費用が負担になるうえ、すべての応募者がエクセレンスを得られるわけではない。従来の段階付け事業の方がよかったという自治体関係者の声は無視できない。

エクセレンスを勝ち取ったサービス提供者は、そのプロフィールとともに、同委員会のウェブサイトに公表され営業に有利となる。なおサービス提供者のプロフィールは、今後同委員会が設ける予定の必須基準にかなった組織であることを示す内容になるそうだ。


2011.03.30 すでに多くの利用者がサービス削減の影響受ける

ケア・アンド・サポート同盟 www.disabilityalliance.org/caresupportall.htm  が自治体のケア・ サービスの状況を1000人の利用者、介護者を対象に行ったところ、すでに4分の1がサービス削減をうけているという(www.communitycare.co.uk)。この4月から政府の予算削減の本格的な影響が出ると予測されるが、すでに深刻な結果がみられた。


2011.02.24 ケアホーム事業大手ブーパ、10万人分のケアホーム不足の可能性を警告

ブーパwww.bupa.co.uk のリポート Who Cares? Adult Social Care Over The Next Decade によると、ケアの予算削減によって今後10年で実質的に8万1千のケアホームのベッドが減ることになる一方、高齢化は進みケアホームの入居が必要な人は1万8千人増えるという。その結果、およそ10万人分のベッドが不足すると予測している。そうなると、必要があっても入居できずに在宅を続ける、そしてやむなく入院ということになる高齢者が増え、NHSのベッドの半分を占めることになる可能性があるという。ブーパはそういう事態を防ぐため、ただちに政府は自治体に対し高齢者ケアに限定した20億ポンドの財源を割り当てることなどを求めている。


2011.02.17 生活給付や住宅給付などを一括したユニバーサル・クレディットを新設する最大規模の福祉改革法案

政府は過去60年で最大と自負するウェルフェア・リフォームの法案

Welfare Reform Bill 2010-11を、2011年2月16日、国会に提出した。www.publications.parliament.uk 労働年金省大臣のイアン・ダンカン・スミス氏は同法案の発表において「福祉制度はもともと公平な社会を築くために設けられた。この法律案は制度にその原理を回復するためのものである。好ましくないことをする人が報われて、最善を尽くすものが不利なことになるという不合理を終わらせることになるだろう。」と述べている。

同法案は次のような点が要点になる。

「ユニバーサル・クレディット」・・基本的に18歳以上から年金受給年齢未満の労働人口すべて、就労者、無職者ともに対象。現状の複雑な給付制度(労働税控除、児童税控除、住宅給付、地方税免除、生活給付、所得に関連した雇用支援手当て、所得に基づいた求職手当て)を一本化するとともに、働いた方が給付に依存し続けるより必ず有利になるようにする。収入が増えるにつれて給付が次第に減るようにすることで給付依存から労働自立へとスムーズに移行させるのが目的。給付の申請は単身でも、カップルの場合は共同でもできる。給付を受けられるのは基本的な条件と経済的条件を満たすものに限られる。

「パーソナル・インデペンデント・ペイメント」・・従来の障害生活手当てに置き換わる。

「不正や間違いに関する新たな権限」

「一家庭が一般の平均収入よりも多い額の福祉給付を受けないよう制限額を設ける」

「労働可能な人の負担金に基づいた雇用支援手当てには、12カ月の期限を設ける」・・病気などのため働けない人たちのためのインキャパシティ給付は雇用支援手当てに置き換えられる予定だ。そして、インキャパシティ給付の現受給者150万人の労働能力アセスメントをあらためて今後3年間で実施するという。

野党の労働党は自分たちが進めた福祉から労働への改革を礎にした改革はサポートするが、仕事がなくては「福祉から労働へ」はうまくいかないと警告する。また児童ケアなどにかんすることなど不明な事柄もいくつかあると指摘する。仕事に関しては政府は大規模な「就労復帰プログラム」を計画しているというがどうだろう。若年世代の5人に1人が失業者という深刻なニュースが流れたばかりだ。

同法の内容が実施されれば、2014年度には年間のウェルフェア・コストは現在より39億ポンド少なくなるそうだ。そのうち25億ポンドの節約は、障害生活手当てからパーソナル・インデペンデント・ペイメントへの移行、そして雇用支援手当ての一部の受給者への期限設置から生まれると推測されている。障害者関連団体には、障害者や貧困家庭をさらなる貧困に追いやるリスクがあると危機感を募らせているところがある。


2011.02.16 コミュニティケア誌の調査によると20%のケア事業者が次年度中に廃業の見込み

自治体の予算削減が本格化する中、コミュニティケア誌は www.communitycare.co.uk 238のケアサービス事業者を対象に調査を行ったところ、本年度に3分の2の事業者が委託量をカットされた。また次年度には81%が委託量のカット、さらに半分の事業者はサービスのレベルを減らさざるをえなくなるとみている。

すでに3分の1の事業者は管理職者を解雇している。大半がさらなる解雇を予測している。次年度に廃業の予想をしている事業者は20%におよぶ。利用者の生活の質、サービスの質に与える影響が深刻なものになることが危惧される。


2011.02.15 高齢者のケアに重大なミスが続くNHS

NHSに対する深刻な苦情に調査、対処するヘルスサービス・オンブズマン www.ombudsman.org.uk が、とくに10ケース(65歳以上)の調査内容 Care and Compassion をまとめて国会に提出した。オンブズマンはその理由をこう記している。「患者たちが共通して経験していることに懸念するため、そして患者たちが受けている現実のケアとNHSの原理と価値観がまったく相違するからである」。メディアはこれら10ケース「病院からケアホームに移送された患者が尿まみれで誰かほかの人の服を着せられ、あざがあった」「食事や飲み物を摂取する介助を一切受けることができなかった」「妻の死亡時に、夫が待合室にいたにもかかわらず、その存在を忘れられたち合わせてもらえなかった」などが、とくに珍しい事例ではないということに衝撃をもって報道した。医療関係者のコメントは職員不足や教育のあり方、ターゲットを満たさなければならないNHSの事務量の多さなどに集中した。


2011.01.13 定年退職制度DRAをこの4月6日―10月1日で段階的廃止

政府は昨年7月に予告したように、この4月1日から半年で段階的に定年退職制度を廃止することを公表した。雇用者が4月6日以前に対象者に通知しその退職時期が10月1日以前である場合はまだ退職を求めることができる。また特別の客観的な理由を明らかにすることで、定年退職を求めることは、それ以降も可能であるそうだ。

なお、女性の国民年金の受給開始年齢は男性と同じ65歳に徐々に引き上げられているが、その過程が加速されると同時に、2020年までに男女ともに開始年齢が66歳へと引き上げられるという。

これに対するAge UKのレスポンスがわかりやすく参考になる。

Our responses to Pensions Bill and DRA announcement www.ageuk.org.uk


2011.01.11 精神保健サービスの成人利用者が増える

精神保健サービスの第4回年次報告書 www.ic.nhs.uk/pubs/mhbmhmds0910 によると、2009年度には125万人以上NHSの精神保健成人サービスを利用した。これはデータ収集を始めてから最も高く、前年度に比較すると4.0 %の増加である。経済不況の影響が指摘されている。

利用者の9割が外来患者だが、入院患者が前年度から5.1%増えた。5年間で初の入院増加である。これは精神保健法による強制入院が30.1%増加したことによるという。


2011.01.06 介護ワーカーとして渡英した外国人労働者が悪質な労働環境で働く

BBC www.bbc.co.uk のラジオ4の2011年1月6日のFace the Factsというドキュメンタリー番組で介護施設で働く一部の外国人労働者の違法な待遇が報告された。長時間休みもなく、最低賃金にも満たない給与で働かされた外国人がインタビューに答えている。失業問題が深刻化する今も介護労働は多くを外国人に頼らざるをえない。100万人以上といわれる介護従事者、違法な労働状況にある外国人ケアワーカーはそのごく一部であるとしても、同番組はかなりの数を推測している。


2010.12.14 ソーシャル・ワーク・リフォーム委員会が進捗状況リポー

2009年12月にソーシャル・ワーク・タスク・フォースが15の勧告を出してから1年ほどがたち、ソーシャル・ワーク改革委員会がその後の進捗状況を発表した。

そのリポートBuilding a safe and confident future: one year on www.education.gov.uk/swrb/ は次の5つの改革の領域をカバーしている。「同専門職の全体的な基準、雇用者とスーパービジョンの基準、ソーシャル・ワーク教育要求基準案、継続的専門職能力開発枠組みのための原理、効果的なパートナーシップのあり方のための提案。」関係者たちは提案がうまくいくかどうかなどについて意見を求められている。

リポートが描くソーシャル・ワークの基準は初めての全国基準枠組みとなるそうで、ソーシャルワーカーが歩むキャリアのすべての段階で、どのような知識や能力を持つことが求められるかが、明確にしめされる。専門職能力フレームワークは次の9項目である。「プロフェッショナリズム、価値観と倫理、多様性、権利・正義・経済的ウェルビーイング、知識、批評的思考と分析、介入と技能、状況と組織、専門職的リーダーシップ。」なお、これはミニマム基準でありソーシャルワーカーの規制の一環である実践規範(2012年に改変予定)とは異なり、あるべき理想をしめしているという。

また同リポートでは、雇用者が新米のソーシャルワーカーには少なくとも1時間半のスーパービジョンを毎週1回、6週間続けること、その後は2週間に1度を半年、その後は毎月1回を最低でも実施することを規定している。同時に直属の上司が登録ソーシャルワーカーではないときでも、他の登録ソーシャルワーカーがスーパーバイザーになるべきだとしている。

昨年はずっとソーシャルワーカーの担当数の過剰さが指摘されていたが、同リポートは仕事の割り当て方の透明性や現場の状況把握の仕組みを作り、仕事が過剰になるような緊急時に対応する計画を立てるべきだとしている。なお、コミュニティケアによると関係者は罰則規定がないことなどを批判している。


2010.12.01 ソーシャルワーカーのアウトソーシングを進める自治体

コミュニティケアwww.communitycare.co.uk によると、バーミンガム市は成人ソーシャルワークの機能をソーシャルエンタープライズにアウトソーシングして、向こう4年間で1億700万ポンドを節約する意向であるという。

成人対象のソーシャルワーカーを全員、ソーシャルエンタープライズに移し、ケアマネジメントの全体の機能、アセスメント、支援計画などを委託することになる。他の自治体もソーシャルワーク機能のなんらかのアウトソーシングを計画実施しており、この方向は例外的なことではないだろう。ロンドン、クロイドン区の成人ソーシャルケア部の職員は「虐待対策担当のソーシャルワーカーだけが自治体に残り、あとはアウトソーシングされる」と予測している。

また、同市はケアの受給資格要件を4段階の最重度(クリティカル)に限定する予定で、イングラドで初めての最もタフなステップを踏む。これで6900万ポンドの節約になるという。


2010.11.30 公衆衛生は自治体の役割に

保健省 www.dh.gov.uk は公衆衛生public healthの白書Healthy lives, Health People: Our strategy for public health in Englandを発表した。この8月に出されたNHS(国営医療制度)白書 Equity and excellence: Liberating the NHS の抜本的改革と平行して行われるローカリズムの色濃い戦略になっいる。

同公衆衛生白書はMARMOT教授のリポートの「健康を決定する社会的要因に取り組むライフコース枠組み」を採用しているという。人々の自己評価や自信、回復力(弾力性)を幼児期の頃から築いていくことをめざす。少し先にでた成人ソーシャルケアビジョン(下記の前項目参照)を補完するものとして考えられている。

NHS白書の内容を簡単に確認しておくと、各地の保健医療計画とサービスの委託提供を行うプライマリ・ケア・トラスト(PCT)、そしてその上層部の地方ごとにある戦略保健当局が2013年に廃止される。そのかわり、保健省に説明責任を持つNHS委託評議会が設置され、同委員会をとおして各地に資金が流れることになる。各地にはPCTのかわりに、家庭医たちがあらたにつくるコンソティアム(イングランド全体で600ほど)が、住民のための保健医療サービス委託を行っていくことになる。また自治体の中に「ヘルスとウェルビーイング評議会」なるものが設けられ、NHS サービス、ソーシャルケア、ヘルス改善に関わる委託が整合性をもつようにする機能を担う。

そして今回の公衆衛生白書によれば、PCTの公衆衛生の機能は、PCTの廃止の2013年に、自治体にうつされる。まず2012年に保健省内に公衆衛生に全責任をもつ当局「公衆衛生イングランド」が設けられ、これをとおして自治体に公衆衛生に限定した予算が渡される。公衆衛生イングランドは、さらに廃止の決まっている感染症や環境ハザードに責任をもつ機関と薬物依存関連対策の機関の機能も引き継ぐ。また公衆衛生の一部のサービスは直接委託実施することになる。

同白書と同時にイングランドの健康に関する資料Our Health and Wellbeing Today が公表されている。児童の健康発達対策を改善することで教育成果の向上、精神保健の改善などを見込めること、現役世代の労働現場での心身の健康改善対策により社会的コストの大幅な節約につなげることができることなどなどがのべられている。保健師4300人を増やすことをめざしているそうで、この冬は同白書に関連して、保健師、精神保健、タバコ管理についてそれぞれドキュメントを発表していくという。


2010.11.16 成人ソーシャルケアビジョン公表される

政府は連立政権プログラムThe Coalition: Our Programme for Government でソーシャルケア制度を改革することに触れているが、このたび、保健省 www.dh.gov.uk は そのためのビジョンThe Vision for Adult Social Care: Capable Communities and social care を公表した。ビジョンの焦点は、「予防活動を促すためにソーシャルケアと保健医療の財源のバリアをのぞく」「ケアの利用者とその介護者がより思うようにサービスを管理できる、また購入できるよう、個別予算の実施をいっそう拡大する」「家族など介護者にも現金直接給付を行い、介護者のために地元でのサービスを使うことで休養ケアへのアクセスを改善する」である。

より個別的より予防的より成果主義(利用者にとって)を進めるという同ビジョンは、中央から地方へと権限をうつすことを約束する。トップダウンではないその改革の進め方は、成人社会サービス部長協会、地方政府協会、保健省によるパートナーシップ同意書Think Local, Act Personal www.puttingpeoplefirst.org.uk/ThinkLocalActPersonal に詳しい。

最終的には2012年春にソーシャルケア改革法案の国会提出になるが、それまでのタイムテーブルは次のようだ。

2010年末、公衆衛生白書の発表・・・2011年春、法律委員会による成人ソーシャルケアに関する法律の全体見直しした結果の発表・・・2011年夏、ケアと支援の財源委員会が報告書を発表・・・2011年末、政府がケアと支援の白書発表・・・2012年春、政府がソーシャルケア改革法案を国会提出

なお、同ビジョンと同時に質と成果へのアプローチを確立するための協議文書Transparency in outcomes: a framework for adult social care (2月締め切り)も発表されている。


2010.10.26 「ケアと支援の財源検討委員会」の活動

2010年7月に設置された「ケアと支援の財源検討委員会」http://carecommission.dh.gov.uk/ が、将来の選択肢を分析し改革のための方策を提言する上で、次のような要件を満たすことをこのほど正式に政府と同意した。

維持可能性と弾力性・・・費用が長期的に国家にとって維持可能であり、かつケアと支援のデマンドに対応できる制度を構築すること。

公平性・・・個人、家族、介護者、社会。

選択・・・幅広いケアの場を個人、家族、介護者に提供し、将来のために計画するよう援助する。

経済的価値性・・・確保できる財源で可能な限り高度なケアの成果を求める。

理解と使用の容易さ・・・制度を可能な限りシンプルかつ明確にして人々の理解を促し、各自が自分の将来のウェルビーイングに責任をもつよう支援する。現状は複雑で理解しにくいばかりでなく、ケアは無料と誤解している人も多く、それが老後の無計画につながっている。

要件とは別に、将来の制度を貫く原理として、「個人や家族のウェルビーイングの促進」と「ケアと支援に関わる家族や介護者やボランティア、そして有給職員、会社、NPO,納税者、広く社会などの貢献を認め、価値付ける」があげられている。前者はある程度イメージがわくものの、後者は具体的にどのようなことをめざすのか見えにくいように思う。実際にどのように制度に反映されるのか興味深い。

同委員会は2011年7月に政府にリポートをまとめベスト・オプションとその実施方法を提言する。政府は、その内容と、以前から法律委員会が取り組んでいる成人ソーシャルケアの法制度の見直し(2010年2月に協議文書発表)の結果と、さらにまもなく発表する予定の政府の成人ソーシャルケアについてのビジョンを総合して、経済的にも法的にも維持可能な成人ソーシャルケア制度を確立するためのホワイトペーパーを発表し、法制化することになる。


2010.10.21 新卒ソーシャルワーカーの就職初年度の受け入れ体制

ソーシャルワーク(SW)の新規資格取得者が成人サービス提供組織に雇用される最初の1年の受け入れ方を改善する試みが進んでいる。新卒のソーシャルワーカーは「習得した知識や専門技術を実践の場で応用するための支援」「専門職と各組織への導入」「高度の適切なスーパービジョン」「SW登録要件にも適う継続した専門職能力の開発の仕組み」(スキルズ・フォ・ケアwww.skillsforcare.org.uk)が必要である。

成人ソーシャル・ケアの労働力戦略の責任を負う組織、スキルズ・フォ・ケアが保健省や関係者と協力して新規資格取得ソーシャルワーカー(NQSW)フレームワークのサポートプログラムを開発し、パイロット・プロジェクトを行っていた。ただその中間報告(2009年4月から2010年3月の実施内容)によると、プロジェクトに参加した調査対象の3分の1の人は能力開発の時間を与えられなかったと答え、3分の2の人が経験の浅さを考慮してもらえずにケースを配分されたと回答しているという。スーパービジョンと研修についてはポジティブだった。最終報告は来年3月にまとめられる。

SW教育の全体的な見直しを行っているソーシャル・ワーク・リフォーム・ボードは、NQSWフレームワークのサポートプログラムの蓄積をもとに、SW新卒者の雇用現場での1年の見習い期間「アセスド・イヤー」を2012年にも導入する計画だ。SWの新規卒業生はまず就職し、その現場で十分なスーパービジョンと研修の時間をもらい、正式な技術アセスメント評価を受けることになる。その評価にパスして初めてソーシャルワーカーの名称を使って実践する免許が得られることになりそうだ。


2010.10.20 2011年度から-2014年度まで4年間の厳しい支出計画

財務省が恒例のスペンディング・レヴューを発表した。

www.hm-treasury.gov.uk/spend_index.htm 政府の政策にしたがい2011年度から2014年度の4年間の各省への財源割当を計画するもので、国の支出の4ポンドのうち1ポンドは借金というかつてなく困難な財政状態を改善するため、予想されてはいたが確かにその内容は非常に厳しいものになっている。住宅手当のカットはホームレスを、児童ケアのカットは児童の貧困を増大させると、関係者は強く懸念している。

自治体への財源は4年間で26%が削減される見込みで、コミュニティケアは、公務員組合が「自治体のソーシャルケアに携わる職員25万人のうち5万人が職を失う可能性があると警告」と伝えている。一方、自治体雇用協会は1割の職員の失業を予想しているという。どちらの予測が当たるにせよ、自治体の組織再構成、職員の役割の見直しとそのための再研修などが進められることになるだろう。

なお、高齢者など成人のソーシャルケアは「犠牲にしない」と財務大臣の自負するところの、21億ポンドの特別追加補正予算が割り当てられるというが、その半分は自治体の一般財源に含まれて交付され、ソーシャルケアという制限つきではない。また後の半分の財源はNHSをとおしてプライマリ・ケア・トラスト(2013年からはGPコンソーティアム)にわたり、入院予防などの医療費削減につながるようなソーシャルケア事業に費やされることになるという。関係者の反応はこの予算が結局はソーシャルケアに使われないだろうという悲観とそうではないという楽観にわかれているようだ。


2010.10.04 高額所得者への児童福祉給付の廃止などを計画

ジョージ・オズボーン財務相(保守)が党大会の基調演説で、高額所得者(現在年収約4万4千ポンド以上だが4万2千ポンドに切り下げられる見込み)への児童福祉給付(child benefit)を廃止すること、また一家庭への社会保障給付を一週間につき500ポンド以下に抑えるという制限を設けると公表し、「給付を受けるどの家族も平均収入(税引き)以上の給付を受けることはないようにする」と確言した。ただし、障害生活手当てや戦争未亡人や労働者のいる家庭で税額控除などをうけている場合などは除外されるという。

高額所得者が家庭に一人以上いれば児童福祉給付を受けられなくなるということで、例えばシングルの女性高額所得者が給付受けられなくなる一方、制限以下の4万ポンドの所得者夫婦の場合は給付を受けることができるとあって、メディアの取材に独身者が不公平感を訴えている。厳しい財政のもとで今後、社会保障給付制度の大幅な改革が見込まれており、これらの計画はその一部にすぎない。


2010.09.28 認知症全国戦略の実施計画の修正案が発表される

前政権の認知症全国戦略の実施計画(2009年7月)を修正する新しいガイダンス Quality outcome for people with dementia: Building on the work of the national Dementia Strategy www.dh.gov.uk  が発表された。同ガイダンスは、あるべきアウトカムに焦点を当て、トップダウン方式ではなくローカリズムを強調する。各地の医療福祉当局がどのようなサービスを計画、委託、提供しなければいけないというようなことは述べられていない。その代わり、保健省の役割と、イネーブラー(可能にする者)としての保健省が政策開発の優先課題として考慮する次のような事項について述べられている。(すべての患者への質の良い早期診断と介入、総合病院の質の向上、入居ケア施設での認知症の生活の質の向上、抗精神病薬使用の削減)。

今後、各地の医療福祉当局は認知症患者のためにどのようなサービスを、いかにしてよい質を保ちながら提供していくのかについて責任をもち、その計画実施を公表することが求められる。


2010.09.23 ケア・サービス料金の値上げを計画する自治体が続々

コミュニティケア誌 www.communitycare.co.uk は9月16日号で各自治体のソーシャルケアのサービス受給要件がいっそう厳しくなりつつあると報道していたが、23日号ではケア・サービス料金の値上げを計画する自治体が増え続けていると伝えている。たてば、ロンドンのリュイシャム区では1週間の利用料金徴収の最高限度額を290ポンドから395ポンドまでにする、もしくは限度額を廃止する計画だという。

28の民間非営利組織でなるチャージング(料金徴収についての)同盟 www.disabilityalliance.org.uk  は2008年に調査を行って Charging into Poverty? というリポートをだしている。それによると、料金が上がるとケア・サービスの利用をやめる人が多く、その結果ニーズが重度化してかえって費用が高くつくということが明らかになった。しかし、自治体は25%から40%の予算削減(2011-2015年)に直面しており、こうした傾向は続く模様だ。個別予算やケア・パッケイジの本人による計画などのパーソナライゼーション・アジェンダにも悪影響が懸念されている。


12.08.2010 13%が個別予算の利用者

保健省の情報センターwww.ic.nhs.ukのウェブサイトに地方自治体とそのパートナーシップ事業の2009年度の暫定的な事業実績が掲載されている。キイファクトのいくつかを以下に記しておく。

●すべての成人サービス利用者とその介護者の13%がパーソナル・バジェット(個別予算)のセルフ・ダイレクティド・サポートの仕組みをとおしてサービスを受けていた。前年度は6.7%だった。(保健省との取り決めで2011年3月までに30%まで増やすことになっている)

●18歳以上成人の81.3%はアセスメントを待つ期間が4週間以下だった。前年度は79.8%だった。

●18歳以上成人の90.4%はアセスメント終了からサービス受給までの期間は4週間以下だった。

●コミュニティ・ケア・サービスを受けている利用者の全体の数に比して、介護者で介護者ケアのサービスを受けた人は26.4%。前年度は23.1%だった。


29.07.2010 停年退職の段階的廃止

www.bis.gov.uk 定年退職の廃止を段階的に進めるという協議文書Phasing out default retirement age: consultation document が発表された。国民年金支給開始を66歳へ切り上げするという従来の予定を速めて実施することも計画されており、それにそって高齢になってもより長く働くよう支援し促すステップでもある。

現在、雇用者は2006年施行の雇用平等(年齢)規則により、被用者を65歳で停年退職させることができるが、65歳以前だと正当な理由がない限り違法になる。また被用者は65歳過ぎても勤務し続けることを要求できる権利があり、雇用者はそれを検討する義務がある。


27.07.2010 ソーシャル・ケア総合協議会廃止

保健省www.dh.gov.uk は特殊法人の見直しReview of arm’s length bodies to cut bureaucracy の一環として、ソーシャルワーカーの登録、規制などを行う総合ソーシャル・ケア協議会GSCCを廃止することにした。将来、ソーシャルワーカーの規制は、15のヘルス専門職を傘下におくヘルス専門職協議会HPCが実施することになり、その名称は変更されるという。

ただし、www.communitycare.co.uk によると、GSCC (ソーシャルワーカーの登録はするが、必須教育内容を定めるのは大臣の責任)とHPC(教育基準は規定するが、専門職の登録はせず)の機能が異なり、具体的な制度の改革は今後の検討しだいとなる。また労働力計画を受け持つ「スキルズ・フォ・ケア」、そして良い実践の研究普及に努める「優秀ソーシャル・ケア研究所」の行く末は定まっていない。


12.07.2010 プライマリ・ケア・トラストを廃止、家庭医がサービス委託

保健省www.dh.gov.uk が白書Equity and excellence: Liberating the NHSや構造改革計画素案Department of Health Draft Structural Reform Plan  http://structuralreformplan.dh.gov.uk を発表し協議を行っている。

各省が連立政権の同意書にある改革を実施する道具として構造改革計画を作成することになっており、保健省もトップダウン方式を変更し、地方・下層部に権限を移すという同案を発表した。各地域での説明責任強化や選択やソーシャルアクションをとおして人々がサービスを改善する権限をもつことをめざすというが、改革の続いた国営医療制度NHSの歴史上でもあまり例のない大規模な改革内容となっている。

構造改革の優先課題としてあげられているのは1(患者中心主義)2(ヘルスケア・アウトカムに焦点と資源を向ける)3(NHSの説明責任の改革)4(パブリック・ヘルスの促進)5(ソーシャルケアの改革)である。なかでも注目を集めているのは、説明責任改革の項目で「地方保健当局(10)の廃止」「プライマリ・ケア・トラスト(150)」の廃止」「すべてのNHSトラストをNHSファウンデーション・トラストにする」「地方自治体の地元の医療制度に関する役割の強化」など、そして医療サービス委託と財源割り当ての効率性改善を目指した「NHS委託委員会の設置」「NHS委託委員会が家庭医コンソーティアム(事業体・組合)に財源を割り当てる」だ。

この計画どおりだと、現在、保健省の指示する各地ごとの優先課題にそって医療保健サービス計画・委託かつ地域ヘルス事業を実施している150のイングランドのプライマリア・ケア・トラストは、2013年までになくなり、3万5千人の家庭医が500ほどのコンソーティアムを組織し、800億ポンドの予算に責任を持ってサービス委託を行うことになる。


2010-07-09 緩和ケアの見直しなどソーシャルケア改革の予定を発表

保健省大臣、アンドリュー・ランズリー氏Andrew Lansleys がイングランド中部リーズ市で催された第5回国際介護者会議で演説し、今後のソーシャルケア改革について言及した。ウェブサイトに演説文が掲載されている。The principles of social care reform   www.dh.gov.uk

かいつまむと、「柔軟な労働時間を要求できる権利の拡大、介護者ならびに利用者の自律性の強化、個人予算の展開拡張、直接現金給付を介護者に給付そして休養ケアの各地元での充実化」などの実現をめざす。そのために、制度改革をするが、そこで原理とするのは「予防、保護、パートナーシップ、個別化」で労働党政権下の政策と特に異なるものではないが、この秋には成人ソーシャルケアのビジョンを公表するそうだ。なお、6月上旬に同大臣は上記の「予防」に沿った方策としてNHS病院の患者が退院後30日以内に再入院する場合、病院は報酬を受けることができなくした。これで病院と地域ケアサービスの連携がよくなる、あるいは病院が地域ケアサービスをサポートする流れが起こることが期待されている。ただ、退院手続きの遅れで自治体が罰金を受ける制度もあり、協働のために解決されなければならない問題も少なくないようだ。

また、この演説で目だったことは、ホスピスや在宅での緩和ケア財源に関して見直しを明らかにしたことだ。なお、介護者戦略もすでに見直しが実施されている。

なお、先に約束している「期療養ケア財源を確保する維持可能なシステム確立のための特別委員会」をできるだけ早く設置し、年内に報告書を出してもらい、それにそって来年度の秋には白書を発表する予定だということも述べている。


2010-06-23 深刻な大幅予算削減の予想

6月22日にオズボーン財務相が緊急予算案を発表した。

www.hm-treasury.gov.uk/junebudget

過去最悪という財政赤字を解消するための緊縮財政策は福祉分野にも厳しいものとなる。児童手当額の向こう3年間凍結、2013年からの障害者生活手当てへの医療アセスメント導入で5人に1人が同資格を失い求職関連給付に切り替わる可能性があるとも予想されている。また住宅給付では最高400ポンド(週)の限度額導入が実施される。

財政研究所 www.ifs.org.uk は、コミュニティケアのウェブサイトwww.communitycare.co.uk によると予算案発表の翌日に「向こう4年間でソーシャルケアの予算が3分の1減ることもありうる」「少なくとも戦後最大の長く深刻な公共支出の時代を迎えたのだ」と警告した。 


2010-06-09 児童福祉従事者開発会議の予算も大幅カット

教育省(5月12日に児童・学校・家族省から改称、児童福祉教育の責任を持つ内容に変わりはない)のマイケル・ゴブ大臣が前大臣に当てた手紙の中で、2010-11年度における6億7千万ポンドの予算削減の内容を明らかにしている。www.education.gov.uk

3億5千9百万ポンドの削減は、全体的な効率化、浪費カット、優先課題の低い事業の小規模化または停止で達成する。例えば、児童福祉労働者開発議会 www.cwdcouncil.org.uk

のマーケティングやコミュニケーションを小規模化して、予算の10%、1500万ポンド)削減する、学校給食トラストのコミュニケーション費用を100万ポンド削減などが含まれている。そして残りの3億1千百万ポンドの削減は、自治体が自由裁量で支出を決定するエリア・ベイスド・グラントから行う。

これらの削減は、5月24日に財務相が2010年度62億ポンドの債務削減予定を発表したが、教育省の負担分である。


2010.05.20 新連立政権が主な政策を発表

The Coalition: our programme for government

http://programmeforgovernment.hmg.gov.uk/files/2010/05/coalition-programme.pdf


●ケア「長期ケアのあり方について特別委員会を設置する、この委員会は、施設に入所する人が入所費用のために家屋などの資産を失わなくてもすむ任意加入の保険などを含めて財源対策を検討する。」「高齢者が自宅で長く暮せるよう住宅改善や地域支援プログラムなどを実施する」「医療研究開発予算において認知症研究を優先課題とする」「障害者が仕事につけるよう職場へのアクセスを改善する」「予防行為が促進されるよう医療と福祉の財源の垣根を取り除く」「個別予算の実施をいっそう進める」「直接現金給付を使って家族介護者の休養サービスへのアクセスを改善する」など。

●児童と家族「2020年までに貧困児童をなくすという目標を維持する」「シュアスタート・プログラムをその当初の目的である早期介入に戻し、対象を貧困家庭に絞る。」「「両親の関係が長く安定したものとなるような支援サービスを助成する」「無料保育所の提供に助成する。提供者が多様であり、その被雇用者は男女のバランスの取れたものであることが望ましい」「両親の関係が崩壊したときその仲介サービスがより活用されるようにするため家族法の包括的見直しをする。」「多問題家族への新しいアプローチのための調査を実施する」など。なお5月12日児童学校家族省は Department for Education

「教育省」に改名したが教育と児童福祉を事業内容とすることには変わりはない。

●国立医療制度「保健医療の支出を毎年、実質増加にする」「事務管理の費用を削減し、その分を実際の医療サービスにまわす」「家庭医の権限を強化し、患者のためのサービスを委託することができるようにする(プライマリ・ケア・トラストの部分的機能の委譲)」「資源配分の実施とサービス委託のガイドラインを作る独立のNHS 評議委員会を設置する」「ある地域で医療サービス機関が閉鎖されることになった場合、その地域の自治体は独立の機構再生委員会に異議申したてができるようにする。同委員会は検討した結果を保健大臣に助言する。」など多数で、トップダウン方式をへらす方向。

●高齢者関連の金融と雇用政策「2011年4月より、年金と所得増加の関連を回復させる。物価上昇率、所得増加率、2.5%のこれら3つのうちの一番高い数字に合わせて上昇させる。」「雇用関連法案を見直し、雇用者と被雇用者双方にとって柔軟性の高い制度を構築する。すべての被雇用者が柔軟な働き方ができるような権利を導入する」「英国初の無料の金融助言サービスを創設する」など。

●高齢者関連の雇用と人権政策「停年の漸次廃止。国民年金の支給開始年齢を66歳に上げるスケジュールの見直し。ただし男性が2016年、女性が2020年より早まる可能性はない。」「英国の権利法案を設けるための調査を行う特別委員会を設置する」など。

●その他「自治体と地域グループに権限とより大きな経済的自律性を委譲する」


2010-05-02 ケア改革の遅れが予想される

5月6日の総選挙が目前にせまってきた。世論調査の支持率は5月2日現在で第一野党の保守党がどの調査でも常に30%をこえて首位に立っているが、労働党と第二野党の自民党がそれぞれ30%にせまる動きもあり、13年ぶりに保守党政権の誕生する可能性もあるとはいえ、どの党も過半数の議席を獲得できない可能性が強く残っている。

いずれにしても、労働党政府が最近に白書で提案したサービスが必要な時点で無料で受けられる普遍的な「ナショナル・ケア・サービス」制度の実現からは遠くなってしまった。保守党と自民党も労働党が白書で提案したケア・サービスの受給のための全国資格要件設置を政策に掲げているが、保守党は資力調査に基づく制度を維持する方針だ。

労働党はケア財源の改革に関して、税とケア費用目的の国民からの徴収で賄うという案を出し、かつ総選挙後に財源確保のための委員会を設置するとしているが、保守党はどちらにも反対している。自民党は委員会設置には賛成している。また保守党は各個人が8000ポンドを施設ケアに入居するための保険費用として前もって支払うオプションを公平な方針として提案しているが、これに自民党は反対している。各党ともケア制度の改革には前向きであるが、三者がコンセンサスを得るのは不可能に近い状況だ。ケアの改革の遅れとその行方がどうなるか、懸念される。


2010.04.26 これだけ知っていれば大丈夫なブックレット

総選挙を前に、成人社会サービス部長協会www.adass.org.ukがAll you need to know about adult social careというファクトや統計、課題を簡略に説明した「これだけ知っていれば大丈夫」的なブックレットをウェブサイトに発表している。同協会代表は前書きで「私たちの仕事はひどく誤解されるているし、よく知られていない。実際はイングランドにおいては年間160億ポンドの予算で、国営医療制度を上回る150万人が関わり、高齢者や身体障害者に不可欠のサービスを行っている。最近、総選挙を前にしたケアの無料化の議論でかつてなく政治の議論の場で私たちの仕事が注目された。確かにこれは重要な議論だが、経済不況と高齢人口増加の問題がより複雑で深刻な影響を及ぼしている。そうした文脈の中で問題を正しくしかし容易に見定められるようこのブックレットを制作した」と述べている。日本人にも基本データをチェックするのに便利な小冊子だ。


2010.04.21  コミュニティケア誌がデメンシア・キャンペーン

週間雑誌コミュニティケアwww.comunitycare.co.ukがウェブサイトで5月6日の総選挙を前にデメンシア(認知症)宣言と称してキャンペーンを展開している。3月の同誌の読者(9割が認知症患者と働く)調査結果によると認知症は政府の優先課題ではない(89%)、認知症戦略のインパクトはほとんどない(66%)、自分の働く地域の認知症ケアの質は悪い(42%)。先に発表された国立会計監査院の発表を裏付けるような内容になっている。

現在、イングランドだけでも60万人の認知症患者がいると推計され、30年後には2倍になると予想されている。が、癌などと比べると、その研究費は12分の1ほどだという。昨年3月に発表された全国認知症戦略の実施をコーディネートするデメンシア専門官(ツァー)が任命されたものの、その実現への政治的意図が不確かだと同誌は不安を述べる。そして「総選挙中のデメンシアについての議論、増加する認知症患者数と財源を増やす必要性の認識を」を求め賛同者の署名を募っている。


2010.03.30 無料でニードのある成人誰もが受けられるナショナル・ケア・サービスを築くという歴史的にも画期的な白書、しかしその財源対策は次期国会に持ち越し


イングランドに「ナショナル・ケア・サービス」を設置するという政府のソーシャルケア白書 Building the National Care Service が発表された。www.dh.gov.uk

協議書Shaping the Future of Care Together  を出して広くコンサルテーションを行った結果、最も支持の多かった下記のような原理に基づく包括的システムを選択するにいたったという。協議書では5つのオプション(自己責任型、パートナーシップ型、保険型、包括型、税負担型)が上げられたものの、自己責任型と税負担型はともに本人または労働世代に負担が重過ぎ不公正とされ選択からはずされていた。同白書は、1948年に成立し主に一般税で賄われ住民誰もが受診時無料の国営医療制度「ナショナル・へルス・サービス」NHSができて以来の大規模なケアに関する制度改革になるとうたっている。


<ナシャナル・ケア・サービスの原理>

普遍的・・・全国資格要件(現制度ではガイドラインはあるものの自治体の裁量による)を満たすケアの必要な18歳以上の成人)はみな支援の対象になる。

必要なときに無料で受けられる・・・支払い能力ではなくニードに基づいた制度である。(現制度では要件に決められたニードはあっても一定以上の資力があれば公的な援助は受けられない。)

協働・・・多様な組織と人々が日々、ケアと支援の必要な個人を協力して支援する。

選択とコントロール・・・すべての人の価値を認め、尊厳を重んじ、人権を守って処遇する。

家族や介護者、地域生活を支援・・・家族や友人、地域が人々の可能性を生かすことにおいて重要な役割をはたしていることを認める。

アクセス可能・・・人々が理解しやすく、正しい選択ができるようにする。


<ナシャナル・ケア・サービスに期待できること>

自立を助ける予防とウェルビーイングのサービス

初の全国一律に法で定められたソーシャルケアを受ける資格要件。アセスメントは自治体を移動しても再評価の必要なく維持できる。

ジョインド・アップ・アセスメント。

ケアと支援の情報助言。

個別予算(本人に直接現金給付または他者が管理)をとおした個別のケアと支援。

集合的で責任を分かちあった公正な財源。


<実施はスローで段階的に実施、財源策はこれから>

経済的に困難な時代に未曾有の負債を抱えた国が志の高い改革を行うことになるわけで、段階的な実施になるという。まず第一段階として在宅で重度のニードのある人のパーソナル・ケアを無料にする法を成立させて2011年からの実施をめざす。また2014年からケア施設に2年以上入所している人のパーソナル・ケア費用の本人負担を無料にする(ただしホテルコストの部分は含まれない。看護ケアの部分はすでにNHSが負担している)。2010年末までにナショナル・ケア・サービス実施の詳細な計画を立てる。それから国務大臣と自治体がケアの必要な人にその提供を義務付けるなど法の制定、そして質や情報提供、各機関協働のあり方、介護に関するその他の給付とソーシャルケアの手続きの一本化、個別予算制度と新制度の整合性をはかるなど、各種枠組みの整備に段階的に取り組み、ナシャナル・ケア・サービスの本格的実施は2015年の次期総選挙のあとになる見込みだという。制度を維持可能なものにする肝心の財源については、この5月に予定された総選挙後に多党のメンバーからなる特別委員会を設置して対策を練る。やはりまた先のばしになってしまったという感はまぬがれない。なお、協議書にあった包括型は65歳以上人口が集約的に負担し65歳以上のニードのある人が無料でケアを受けるという内容だった。

さらにもう一つ大事なことを同白書は発表している。ケアに携わる人たちの規制のリフォームである。現在、ソーシャルワーカーを登録している総合ケア協議会GSCCはケアワーカーもみな順次登録していくことになっていたが、今後はソーシャルワーカーとその教育のみを責任として名称もソーシャルワーク総合協議会と改称する。その上で各ヘルスケア専門職規制団体全体の監督をする組織の傘下に入る。一方、在宅や施設のケアワーカーは新たなケア専門職協議会からライセンスを取得することになる。保健省はソーシャルケア総合協議会、スキルズ・フォ・ケア、ソーシャルケア優秀研究所の経済効率性を検討しているところだがその結果を見ずに同白書が先行することになった。


2010.03.04 メディアの注目を浴びる児童サービスの影で成人サービスに厳しい削減

財政会計公認研究所がウェブサイトwww.publicfinance.co.uk で「容赦ない成人のケア支出削減を計画する自治体」councils planning savage cuts to adult care spendingという記事を載せている。それによると、2010年度、イングランドとウエールズの59%の自治体が成人ケアサービスの予算の7%を削減する計画だという。一方児童のサービスは87%が削減すると答えたものの、削減率は1%だという。自治体の成人部長協会と児童ケアサービス部長協会が作る共同委員の理事長が「近年とくに世間を騒がせた児童虐待死(ロンドン、ハーリンゲイ区とバーミンガムの事件)が一般の不安と関心を児童サービスに集めていることから、自治体は児童サービスを削減することには恐れをなしていると」発言しているという。BBCが向こう3-5年で2万5千の自治体職員が失業すると予測したばかりだが、同氏は10万人というのがもっとリアルな数字と指摘しているのだそうだ。児童サービスよりも成人ケアサービス従事者の大量な削減も予想されている。



2010.02.20 自治体はますます進む高齢化によるインパクトへの準備不足

各地の公共サービスの経済的効率効果性を高めることをめざした監査委員会

www.audit-commission.gov.uk がUnder pressure, Tackling the financial challenge for councils of an ageing population という報告書を出して、自治体に対して、今後さらに深刻化する高齢社会への準備不足を警告している。

同委員会は各自治体が高齢人口増加にどのように対応する計画なのか、112の自治体の経済計画を監査したところ、多くの自治体が人口高齢化のもたらす課題について重きを置いていなかった。人口変化について言及しているところは半分に過ぎなかった。1割だけが、人口高齢化の経済的インパクトの推計を試みていた。大半の自治体が高齢化が今後、自治体の提供するサービスにどのような影響をもたらすかの予測やそれに対する計画について取り組んでいなかった。

これから少なくとも数年、公共支出全般に削減が予想されるが、同時に高齢化が進み、さまざまなインパクトをもたらす。もっとも大きい経済的チャレンジはケアの費用で、2000年度から2007年度の間においては46%増加している。同委員会は、人口の高齢化率と同じ割合で単純にケアサービスの費用が増えるとすれば、その費用は2026年までに今の2倍になるという。一方、ケアの費用は自治体間でかなり違い、例えばある自治体があるサービスに費やす1人分の平均が別の自治体の3倍というケースがある。

同委員会は十分なサービスが提供できなくなる破綻のリスクをさけるため、無駄の削減、住宅やヘルス改善、予防によるケアニーズの削減などを含めた多機関の共同する長期的戦略計画とサービスの改革を勧めている。



2010.02.10 ソーシャルワーク改革、雇用者の守るべき全国基準 

イングランドのソーシャルワーク改革が進められている。2009年12月にソーシャルワーク・タスク・フォースがその最終報告Building a safe, confident future www.dcsf.gov.uk/swtf で15の勧告を行い、政府はこの勧告をすべて実施する方向で受け入れた。その後、改革実施を遂行するソーシャルワーク改革委員会が設置され、2010年度初期(?)のうちに政府が同委員会などのサポートを得て、改革プランを発表する予定だ。なお同委員会はソーシャルワークの現場で働く実践者の意見を広く吸い上げて改革に確かに反映させていくことが求められている。

労働組合、ユニソンwww.unison.org.ukは、組合員向けに先のリポートについて解説を行ったわかりやすい小冊子をだしている。Building a safe, confident future – the final report of the Social Work Task Force,  Your questions answered この中で、ユニソンは「10年計画というのはいいけれど、まず短期的にソーシャルサービスのキャパシティを増やし、過剰な仕事量と事務手続きを減らし、労働条件を改善しなければ、改革は実現されない」と述べた上で、15の勧告のうちの「雇用者が守るべきソーシャルワーカーへのサポート、スーパービジョンなどについての全国基準」をもっとも重大な項目として詳しく言及している。この基準を開発するに当たり、同タスクフォースはソーシャルワーカーの雇用者は39の領域において現状を検討しなければならないとしているが、ユニソンは2010年5月までに、各地の関係者がこれらの検討を実施するよう組合員に働きかけるよう呼びかけている。

また同タスクフォースの勧告がソーシャルワーカーが担当するケースの数に制限を設けることはしていないことについて、適正なケース数についてのコンセンサスはないと説明し、「しかし、タスクフォースは雇用者基準は雇用者が各地で、各チーム及びサービスのケース数の上限を設けるよう求めるだろう」としている。これらの上限数はケアクオリティ委員会などの監査でチェックを受けることになるだろうとも述べられている。ただしユニソンは全国的な目安がないことに懸念を表し、各地の上限数に照らして現場の実態を見守り、それによっては全国的な目安の設置を求めていく議論もありうるだろうとしている。


2010. 01.25 「高齢者により多くの雇用機会を」と平等人権委員会

平等人権委員会 www.equalityhumanrights.com が高齢者により多くの雇用機会をもたらすよう政策提案を行った。提案は国が年度内にも見直しする予定の雇用者が65歳で被用者を退職させることができる現行法を廃止すること、すべての年代の被用者に柔軟な雇用体制を求める権利を拡大すること、求人のあり方を抜本的に見直すことなどを含んでいる。

またこの提案と同時に同委員会は、1494人の50歳から75歳の男女を対象に労働についての抱負や障害についてきいた調査結果を発表した。それによると回答者のマジョリティが政策や社会的態度に大きな改革が必要と考えている。そして回答者の男性の24%、女性の64%が国民年金受給年齢(現在女性60歳、男性65歳、2020年にはともに65歳になる)に達した後も働きたいと答えているが、構造的障害や時代遅れのステレオタイプな対応がそれを妨げるという。まずは勤務時間や労働の場の柔軟性がより長く就労を継続する鍵になるとも答えている。なお就労継続の一番の動機は経済的な必要性だ。同委員会は高齢者の低賃金雇用、低所得の問題を取り上げている。

同委員会は今後、雇用者と連携して、非差別的な求人方針のためのガイダンスを開発していくという。「高齢者が健康を保ち、就労を続ければ、経済の繁栄につながるとともに広くは社会福祉のコストを抑え、国民全体の消費力を増大させることになる」がその主張するところだ。


2010.01.21 児童の教育福祉サービスのウオッチドッグに問題あり

児童の教育福祉サービスの監査機関であるOfstedが一貫性を欠くなど問題点が報じられてい る。もともとは同機関は学校教育監査が専門だった。コミュニティケア

www.communitycare.co.ukによると、その役割を吟味するためにもたれた聴聞会で元ソーシャルケア監査委員会(旧CSCI)の所長、プラット氏が「旧ソーシャル・ケア監査委員会(ケア・クオリティ委員会に統合)から児童福祉監査の部門が2007年にOfstedに移動したとき、人材などその移行方法に問題があった」と指摘しているという。また、同氏は「Ofstedに児童福祉監査の機能が移動したとき、成人サービスと児童サービスがいかに統合されるかというフォーカスが失われた」とも述べている。ケア・サービスの質を監視する仕組みは90年代半ばから試行錯誤が続けられ、自治体や地域保健局の一部局から全国独立組織に移行するなど組織改変が繰り返されてきた。最近、医療と福祉の監視は公民を対象とする総合的なケア・クオリティ委員会に統合されたが、児童と成人という仕切りからすると、児童福祉が教育に統合されることで分断され、新たな課題が生じたことになる。


2010.01.14 国立会計検査院が全国認知症戦略の実施状況に厳しい警告

各省や公立機関の支出のあり方を監視する国立会計検査院 www.nao.org.uk がイングランドの5年計画「全国認知症戦略」(2009年2月発表)の実施状況を調査して、「年間およそ82億ポンドの予算が認知症ケア(医療と福祉)に費やされているが、私たちの2007年のリポートでもそうであったように、やはり現行サービスは金額にみあう価値あるものとなっていない」と結論している。ちなみに、この調査は戦略発表5ヶ月後に実施している。

初めて認知症を国の事業の優先課題とした同認知症戦略は大いに歓迎された。しかし同検査院はその実施においては、リーダーシップ、財源、インセンティブや情報などの点で物足りないものがあるという。まず、「各地域の保健医療サービスの責任をもつプライマリ・ケア・トラストの業績を監視する優先項目群に認知症ケアは含まれていない。この結果として、各プライマリ・ケア・トラストは財源の使い方において認知症ケアを優先にしなければならないというインセンティブをもたない。よって改善はいまだ効果的な各地のリーダーシップ、質重視の共同委託、包括的なパフォーマンス情報などに依拠しているわけだが、それらがやはり欠如している。」という。さらに「戦略は、病院や施設入居を防ぐことで節約できる財源(18億ポンド)をコミュニティでの初期介入やケアにまわし認知症患者の生活の質を高めるという考え方をとっている。しかし、先述した問題の多い現状、そして経済的な困難にある今、セカンダリー・ケアからプライマリ・ケアへの財源の移動は難しいだろう。」

同委員会は次のようなことを含めて勧告を行っている。「保健省は節約見込みについてよりしっかりした根拠を築き、そのインパクト・アセスメントを堅固なものにすべきである。そし て、2010年までに、認知症のデマンドと資格要件のいろいろなシナリオによるモデルに基づいた予想結果を含めて、それらの内容を発表すべきである。」「すべての病院は2010年3月までに認知症のクリニカル・リーダーを任命すべきである。プライマリ・ケア・トラストも認知症サービス委託リーダーを任命する」「保健省は医療・看護の資格取得コースに認知症の認識とケアを組み込むことを、労働力開発アクション・プランに入れるべきである。」「保健省は2010年末までに、保健医療の専門職のための認知症研修の認定事業を開始するべきである。」


2009.12.09 6自治体の児童サービスが深刻な状況の印である赤旗マークに「自治体が他の公共機関と協力して住民のニーズにいかに応えているか」を評価する「包括的地域アセスメント」Comprehensive Area Assessment(CAA) というものが実施されている。中心になって実施するのは政府の委託を受けた監査委員会 www.audit-commission.gov.uk

 で他の公的監査機関、ケア・クオリティ委員会やOFsted(教育関連の監査機関)など6組織と共同している。これらの評価結果は毎年公にされることになっているが、今回初の結果が発表された。http://oneplace.direct.gov.uk これでその年度の各地の全体的な生活の質のスナップショットを見ることができるわけである。

今回、特にメディアで報道されたのは児童虐待対策などのサービスを実施する児童福祉課についてであった。6自治体が児童福祉課の仕事において重大な懸念(赤旗マーク)があると判断されたことが、大きなニュースになった。OFstedに「悪い」と評価されたところは9自治体あったが、赤旗は6自治体。「悪い」とされても赤旗にされなかったところは効果的な改善の計画が実施されているところだという。


2009.12.08 介護者給付を知らず借金に悩む人もケアラーズ(介護者)UKは12月4日を「介護者権利の日」として全国でいろいろなイベントを組織した。www.carers.org.uk この日のために行われたIpsos MORIの調査(16歳以上3946人対象、2009年11月実施)www.ipsos-mori.com

によると、回答者の9%が介護のために仕事を辞めた。7%は仕事の時間を減らした。29%は週に50時間以上ケアしている。これまで介護してきた年月の平均は6.46年。どのくらい介護することになるかと介護者が予測していた年月の平均は13年。32%は将来の経済設計を立てていない。

同じく11月にケアラーズUKが実施した調査(350人対象)では35%の回答者が公的給付受給の資格があることを知らないために受けていなかった。それらの内20%はもし受給していれば借金をせずにすんだ、40%は経済的に絶えず困難な思いをせずにすんだと回答している。ケアラーズUKは収入が減ると同時に余分な負担が増え、それが何年続くか予想がつかない介護者たちに、どのような公的給付の資格があるかアドバイスを求め受給できるものを受給するよう訴えている。

なお2010年7月に英国リーズ市で国際介護者会議が開催される。ケアラーズUKはスピーカーを含めて参加者を受付中だ。4つの主テーマは、医療福祉サービス、介護と雇用、助成・金融・法的支援、技術・デザイン・環境構築である。


2009. 12. 03 ケア・クオリティ委員会による成人ソーシャルケアの評価

この4月にスタートしたケア・クオリティ委員会www.cqc.org.ukが設置後初めて正式な文書を発表した。成人ソーシャルケア・サービスに関する以下4つのドキュメントである。「148自治体による成人ソーシャルケア・サービスの評価―政府の決めた7項目(アウトカム)についての実践内容を含む」「自治体が可能な限り最高のケアを委託しているかどうか、それらのプロバイダーは民間営利、非営利、公共セクターのどれかの分析」「2万4千件のケアホーム、在宅ケア、看護派遣業などの実践についての最新情報(ケアの質の改善などを含む)」「ケア・クオリティ委員会による政府の成人ソーシャルケアに関する協議文書に対する正式見解」

ケアクオリティ委員会(CQC)はウェブサイトのニュースリ・リースで「同委員会は成人ソーシャルケア・サービスの改善を称えると同時に悪いケアの実践をなくすよう更なる努力を求める」と題して次のようなことを述べている。

自治体の成人ケア・サービスは全体的には改善しており95%の自治体が「非常に良い、または良い」にランクされている。前年度はこれが87%であった。ただしアセスメントに関して問題がある自治体が4分の1あり人々の生活に影響を与えている。また3分の1はケアにおける利用者への尊厳や尊敬に関してまだ改善すべきことがあった。

サービス提供者は「非常に良い、良い」の割合が前年度の69%から77%に向上した。しかし、400件の事業者が悪い、そして3500件は適切にランクされている。悪い実践には個別のケアプランや与薬、職員へのスーパービジョン、健康管理、安全、ウェルビーイングが含まれている。高齢者用ケアホームでは5分の1が社会的接触やアクティビティで基準を満たしていない。これはもっとも進歩の遅い項目である。

一部の自治体は、悪い、または適切とランクされたケア業者からサービスをかなりの割合で購入している。コストやサービスの有無、個人の選択などいろいろな事情があるにせよ、自治体は長期的な視点で健全なケアの市場が育つよう開発する責任を持っている。同委員会はこの点で自治体と話し合いを持ち、今後とも委託のあり方について詳しく監視していく。

ケア・クオリティ委員会は8自治体を改善の必要な自治体として指摘し、詳細な検討の対象とした。また、これらの自治体は政府から実際的な指導を受けることになった。さらに16自治体については業務実績に懸念のあることを理由に徹底的なサービス監査をする。

同委員会は経済不況が今後、ソーシャル・ケアのアクセスにどう影響していくかを監視し、適切な場合は助言を行っていく。この年度は影響は見られなかったが、今後、公共支出が抑えられるにつれ自治体がサービス・アクセスの資格要件を厳しくしていかなければならなくなるかもしれないと懸念している。

ケアクオリティ委員会は2010年4月より全セクターの医療、福祉(成人)のサービス提供者を対象にした、より厳格な登録制度、サービス基準を導入する。従来の全国最低基準(成人ソーシャル・ケアと民間医療)は安全と質の必須基準Essential Standards on safety and Quality に置き換えられる。

同委員会は従来の委員会よりも強い権限をもっており、事に迅速に対応できる。またサービス利用者の見解を今まで以上に重視して判断し、悪い実践を市場から締め出していく決意をしている。現在登録している業者が新たな制度の下で登録できるとは限らないようだ。


2009. 11.17  アルツハイマー協会が認知症患者の入院期間を短くするよう訴える

認知症患者への抗精神病薬の使用についてのリポートが出て数日後、また一つ認知症ケアの思わしくないニュースが流れた。アルツハイマー協会は認知症患者のためのさまざまなキャンペーンを実施しているが、今回はCounting the cost: caring for people with dementia  www.alzheimers.org.uk という報告をだして、認知症患者の入院期間を少なくとも1週間減らすよう訴えた。家族介護者1291人、看護師657人、看護管理職479人を対象に行った調査によると、同じタイプの治療で入院しても認知症患者は他の患者よりずっと長く入院しており、しかもそのケアが貧しく認知症患者にネガティブな影響を与えているようだ。看護師の54%は「まったく認知症についての研修を受けていない」、34%は「認知症について十分な研修を受けていない」と答え、介護者の77%は病院の認知症ケアについて「不満足」と感じており、54%は「患者に非常にネガティブな影響がでた」と答えている。

アルツハイマー協会所長は「全国の病院ベッドの4分の1を認知症患者が占めているというのに、病院での認知症ケアの質はスキャンダラスといっていいほどいろいろだ」と嘆いて「今後10年でさらに100万人の認知症患者が増えるのだから国営医療制度の組織は認知症に真剣にとりくんでほしい。そして入院期間を短くして節約できる財源(少なくとも8000万ポンドと推計)で人材研修と地域ケアに投資してほしい」と訴えている。


2009.11.13 認知症患者への抗精神病薬乱用の改善に向けて

11月13日、メディアで「年間1800人の認知症患者が抗精神病薬を処方された結果として亡くなっている」と報告するリポートについてのニュースが繰り返し流れた。同リポートThe use of antipsychotic medication for people with dementia  www.dh.gov.ukは、政府の委託を受けたBanerjee教授がイングランドのNHS(国営医療制度のサービス)の認知症ケアにおける同薬の使用について検討調査しまとめたもので、11の提言(下記参照)を行っている。政府はこれらの提言をみな受け入れることにした。

認知症患者の気持ちの動揺や攻撃性などに対処するのに抗精神病薬が使われているが、患者のクオリティ・オブ・ライフを損なう不適切な使用は長年批判されてきた。ようやくこのリポートでその全体像が明らかにされたことになる。まず処方されている人数はおよそ18万人、そしてなんらかの効果を得ている患者は5人に1人にすぎないという。ケアの現場に十分なサポートがあれば、使用を3分の1(利益がリスクを上まわるケース)に減らすことができると推計している。

なお同リポートに先立ち、2009年2月に保健省は初めて全国認知症戦略Living well with Dementia: A National Dementia Strategyを発表した。同戦略は「認知症についての認識/早期診断・介入/高度の質のケア」の3領域で17の具体的な目標を掲げている。今後、イングランドにおける認知症ケアの本格的な改善が期待される。

11の勧告の要約は次のとおりである。

① 抗精神病薬の使用を減らす、かつ使用する場合はクリニカル・ガバナンスの優先課題とするなどして適切な実践を確保するようにする。

② ①については認知症全国臨床ダイレクターがリーダーシップをとって実行し、半年ごとにその進行状況を保健省担当大臣に報告する。

③ 認知症全国臨床ダイレクターは全国、ローカルの臨床監査を利用してプライマリ・ケア・トラストの抗精神病薬使用についてのデータを蓄積する。

④ 認知症患者に本当に必要なときのみ抗精神病薬を処方する。それを実行するために明確な実際的な、かつ意欲的なゴールを設ける。

⑤ 問題行動に対処する薬理学的でない方法の費用効果性について、または抗精神病薬の代案となる薬理学的アプローチなどについて更なる研究を行う。

⑥医療関連の各王立大学は医療従事者が、ケアホームに住む認知症患者の複雑な精神的身体的症状に対応できるよう適切な技術を身につけるためのカリキュラムを開発する。

⑦全国職業資格の1つとして認知症ケア資格を設けるなど、ケアホームのワーカーのための適切な認知症ケア開発を行う。

⑧プライマリ・ケア・トラストはケアホームをサポートするためのサービスを地元の精神保健機関に委託する。

⑨ケア施設や病院を監査するケア・クオリティ委員会は抗精神病薬の使用率、実践ガイドラインの遵守、その他の技術の実践などを良いケアの質の印とみなし、そのデータを各地のサービス委託者が参考にできるようにする。

⑩ 各種セラピーを利用できるようにする。

⑪高齢者メンタルへルス機関と家庭医は在宅で抗精神病薬を処方されている患者のいろいろな問題に対応するため会合を持ち、最良の実践(開始、少量化、停止)について同意する。


2009.10.13 不況の影で児童のネグレクト増加

NPOのアクション・フォ・チルドレンwww.actionforchildren.org.ukが[ネグレクトに目覚めよ]というキャンペーンを行っている。2009年8月に実施された同組織の委託で実施された調査(小学校や保育園,医療従事者など2000人対象)によると、回答者の11%が過去1年間で家庭でのネグレクトと疑われるケース(悪臭、不潔、問題行動、不適切なケアや衣服、アルコールや薬物関連、などを含む)が増えたと答えている。ネグレクトの原因には家庭崩壊や育児技術の欠如などが考えられているが、回答者の5人に1人が経済不況が影響しているといい、3人に1人が家庭の収入が減ったことが関係していると指摘している。

現場で児童のネグレクトに触れる機会の多い専門職は、ネグレクトに関する十分な研修と早期(あまり深刻でない段階)に対処できる仕組み、そして適切な対応のためのガイドラインを望んでいる。


2009.10.12 児童や虚弱成人と働くのに不適切な人を除外するための独立保護

局の働き

2002年、小学校の用務員が2人の女子生徒を殺害するという痛ましい事件があっ

た。この事件についての取調べの過程で雇用手続きのあり方、責任の所在が問われ、虚弱グループ保護法Safeguarding Vulnerable Group Act 2006の成立につながった。そして同法のもと2008年にIndependent safeguarding Authority 独立保護局(略称ISA)www.isa-gov.org.uk が、不適切な人がケアや教育の現場に雇用、またはボランティアとして採用されないようにするため設置された。以来、同局は保健省そして児童学校家族省大臣にそれぞれが責任を持つ雇用禁止リスト(児童と働くのに不適切な人のリスト、児童保護法リスト、虚弱成人保護リスト)に関する決定においてアドバイスを行ってきた。

この10月12日からは、同法の施行が進み、検査・禁止計画Vetting and Barring Schemeの名のもとに保護のしくみが強化される。上記の3つのリストは児童用、虚弱成人用の2つのリストに置き換えられ、ともにISAが責任をもっていく。また雇用者や社会サービス部などは虚弱グループが危害にあう可能性を未然に防ぐため、危害を加える恐れのある人についてISAに通報する義務が生じた。禁じられた人がそれを隠して働いた場合、犯罪行為として罰されることになる。また、これまでたいていの場合、有罪判決のあった記録のチェックを受ければよかったがこれからは疑いの段階の記録まで含めてチェックされることになる。

さらに2010年7月からは、新しく虚弱グループと接する仕事につくあるいはボランティアをする人、また職務内容が規制行為〔虚弱グループと接触を持つ活動〕を行うように変わる人、職場が変わる人はISAに登録するようになる。現在虚弱グループと働いていて今後もそれを続ける人は5年の間に漸次登録を行うことになる。

ISAは犯罪記録事務所(CRB)と共同して作業を進めるという。CRBが情報を集め、それをISAが審査して登録か禁止リストに入れるかどうかの判断を行う。応募者が禁止リストに入ることになれば直ちに雇用者に通知される。

ただし、ISA事業の実施については「準備不足」が指摘され、一般への周知も徹底されておらず、詳細についての混乱がある。とはいえ最近も保育園の女性職員が多数の幼児を性的に虐待しその映像を他に配布していたという、悲痛なニュースがあった。なんとかISAの事業がこうした事件を防ぐことにつながればいい。

最後に、費用の問題。「コミュニティケア」www.communitycare.co.ukによれば、英国ホームケア協会www.ukhca.co.ukは、ホームヘルパーの離職率は25%と非常に高く、ケアの主な委託者である自治体がかさむ登録費用を考慮しなければ、求人難はいっそう深刻になると警告しているという。


2009.10.01 問題山積みの里親制度

イングランドでは今このとき、およそ6万人の児童が自治体の保護の下にある。そして、その内の7割(4万2000人以上)が3万7千人の里親家庭で暮しているという。

児童福祉の要にある里親制度だが、改善されるべき課題が山積みのようだ。NPO 里親ネットワークwww.fostering.netはソーシャルワーカーによるサポートを充実させること、報酬の改善、地位の向上などを求めて、他の12のNPOと共同してキャンペーン Together for   Change を開始した。またこれに先立ち、同組織は里親たちへの調査結果を発表し、里親がケアする児童についての十分な情報を得られないという実態をうったえていた。この後まもなく児童家庭学校省www.dcsf.gov.ukは里親、養子、児童施設全国最低基準の見直しコンサルテーションに取り組み始め、児童担当大臣は自治体への手紙の中(2009.09.24)で、「事件に至った数多くのケースで里親が児童についての十分な情報を得られず、同居する他の児童が危険なめにあうおそれがあった。」「すでに現存の規則、基準が里親が児童の生い立ちや家族についてよく理解することの必要性を明らかにしているが、今回の修正では自治体が里親に児童についての情報を十分に与えるようより強く求める」と述べている。

2006年3月、ピーターという名の幼児の残酷きわまる虐待死がメディアを騒がし人々を驚愕させた。過去にもそうであったように、国はまたも児童虐待対策の見直しを繰り返さねばならなかった。そうした悲劇を繰り返さないようにというソーシャルワーカーへのプレッシャーのせいか、保護児童の数が増えている。当然、里親の必要性も高まる。里親ネットワークは8200人(英国全体では1万人)が不足していると推計している。


2009.07.30 SWTFがソーシャル・ワーク国立大学の創設を提案www.dcsf.gov.uk/swtf

2008年に保健省と児童・学校・家族省が共同で設置したソーシャル・ワーク・タスク・フォース(略称SWTF)は7月に中間報告書Facing up to the Task を発表した。同タスクフォースの課題は、児童虐待対策制度の見直しを行ったラミング・リポートの勧告をソーシャル・ワークに関わる部分でどのような形で実施したらよいかを検討することである。

中間報告書はまずソーシャル・ワーク国立大学の創設を提案している。ソーシャル・ワークという専門職の意見をより強固に結集した形でまとめ、政策論議に参加し同専門職をプロモートし公共の理解を改善し、さらに実践基準を向上していくためには、同大学の設置が必要だという。その他には、ソーシャル・ワーク教育の改善のためには雇用者と教育者のパートナーシップの改善が必要だとしている。またより明確な共通のキャリア構成、雇用計画のためのデータの改善、ソーシャル・ワーカーの時間の使い方やスーパービジョン、担当ケースの量などについて明確なガイダンスが必要だともしている。最終の報告書は

10月に発表される予定。


2009.07.14 ナショナル・ケア・サービスを提案する協議書を発表 www.dh.gov.uk

ケアのパーソナライゼーション・アジェンダが進んでいるイングランドだが、今後ますます増えるケアのコストをどう賄っていくかという根本の課題が残されたままだった。それにとうとう取り組んだ「ナショナル・ケア・サービス」(成人対象)を提案する協議書「ともにケアの未来を築く」Shaping the future of care Together が発表された。ナシャナル・ケア・サービスは個別性、普遍性、シンプル、公平を原則に、資格要件を満たした誰もがある程度のサービス(給付金)にアクセスする権利を持つ制度にするという。従来の制度ではニーズ審査の権利はあってもサービスの権利は設けられていなかった。また新制度では引越しをしてもニーズ審査のプロセスを繰り返さずにケアを利用できることになるという。現在は、国のガイダンスはあるものの自治体によって資格要件も費用負担も一様でない。

しかしなんといっても、今回の協議書の要は財源確保についてである。現状のままではケア財政は破綻するとして、前提に国と個人のパートナーシップが基盤にあるべきとした上で、次のようにナシャナル・ケア・サービスを維持するための選択肢をあげて意見を募っている。1パートナーシップ型(基本的なケアと支援は国と個人が共同負担する。ケアの必要な誰もが基本的なケアの費用の何割かを国から受ける。資力のない人はそれ以上の助成を受けられる。ただ資力のある人で高額のケア費用、例えば何年もケア施設に入居するなどのケースは現在のように貯蓄や自宅を売却したりして賄うことになるかもしれない。) 2保険型(原則はパートナーシップだが、個人が保険に加入して高額ケア費用負担に備えることができるよう、国は民間保険会社と共同する、または独自の保険を創設して環境を整える。) 3包括型(65歳以上で資力のある者は皆、国の設けるケア保険に加入費用を支払うことを義務付け、ケアが必要なすべての高齢者が自己負担なしでケア費用がカバーされる。この線にそって、65歳以下成人の制度も検討する)なお、食費や居住費の負担はここでいうナショナル・ケア・サービス制度に含まれていない。協議は11月まで続けられる。


2009.05.12 着々と進むケアのパーソナライゼーションPersonalisation

2007年、保健省は「人々を最優先に」Putting people First(協約書)でケアのパーソナライゼーションを推進する計画を明らかにし、利用者自身がニーズを特定し、かつそれをいかに満たすかの方向を決めサービス委託を行う、そしてそのための個人予算Personal Budgetを保持する(概念上であれ)という流れが進んでいる。その実施の形態は各自治体さまざまだ。保健省の自治体向け個人予算実施のためのガイダンスには次のような「7ステップ・モデル」が示されている。1(資源割り当システムとある種の自己評価法を使った個人予算額の設定)2(本人自身または家族やケアマネジャーの支援を受けてサービスの計画)3(計画についての本人と自治体の合意)4(個人予算の管理方法を決定)5(本人または他者によるサービス提供者の選択・委託、日々の管理など計画の実行)6(サービスを使っての生活)7(サービスの見直し)。このようにサービスの大量契約が個別契約にシフトし、利用者本人がサービスの方向を決定していく過程が本格的に実施されていくと、いよいよ利用者の志向がケアの市場を形作っていくことになると予想される。

1990年初頭に導入されたケアマネジメント方式は1997年に直接現金給与制度も取り入れたが、これでさらに新たな局面を迎えた。イングランドの成人社会サービス部長協会と地方自治体協会の最近の共同調査によれば、2009年3月現在総計9万3千人が個人予算を受け取っている。このトレンドが続くとすると、2010年3月には自治体の助成を受けるケア利用者の5人に1人、総計20万6千人が個人予算を利用することになるという。www.adass.org.uk 個人予算のパイロット・プロジェクトは「イン・コントロール」のホームページで詳細のリポートを見ることができる。www.in-control.org.uk


2009.04.16 ソーシャルケアの技能アカデミーNational Skills Academy for Social Care www.skillsacademyforsocialcare.org.uk

同アカデミーは2009年の内に作業を始める予定。すでにSCIEによってホームページは準備されており、どのような事業内容になるかを知ることはできる。最初の3年間で、次のような5項目が計画されている。●パーソナライズド・ケア・プログラム(個人を含めて、サービス委託のノウ・ハウを学びたい人たちのためのネットワークとなる全国委託プログラムなど)●クオリティ・アシュアランス・システム(研修サービス提供者の質の維持を目指した認定事業など)●リーダーシップ・プログラム(成人ソーシャルケア部長など管理職のためのプログラム)●キャリア開発・雇用維持プログラム(介護職員の管理職へのキャリア・アップなどの事業)●求人プログラム(キャンペーンなど)


2009.04.05     the mental capacity Act Deprivation of Liberty safeguards MCA DOL保護(略称) www.dh.gov.uk

この4月1日から導入されたMCA DOL保護は18歳以上の成人で、ケアや治療に関してインフォームド・コンセントのできない知的障害者や認知症患者などが対象。保健福祉のサービス利用者の中でも最も虚弱な人たちができる限り自由を束縛されないような体制でケアを受けることができるようにすること、恣意的な判断で利用者の自由を剥奪することを防ぐこと、虚弱者の保護、違法な拘束に対してチャレンジする権利を確保することが狙いである。


2009.04.01 ケア・クオリティ委員会Care Quality Commission www.cqc.org.uk

医療と福祉の両サービスを登録し、監視するケア・クオリティ委員会が成立した。これまでのヘルス・ケア委員会、メンタルヘルス法委員会、ソーシャル・ケア監査委員会の3委員会の事業を統合した包括的な機関だ。新しい委員会は、歴史上初めてNHS(国営医療制度)の病院や救急サービスも感染症管理に関連して登録の対称とする。また2010年からはあらたな基準、規則のもとに登録がなされる予定だが、現在の全国最低基準に手を加えるようで、その準備が今なされているという。そして登録事業者がこれらの基準を満たさないときやサービス利用者の基本的人権が危険な状態にあると判断されるとき、同新委員会はある程度の柔軟性をもって罰金や公的警告などのアクションをとることができる。


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